気づかれない「競争」
Japan In-depth / 2018年1月23日 14時41分
為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)
【まとめ】
・競争の定義を「自然淘汰」とする。
・選ばれたということは競争に勝ったということ。
・ある程度集団として競争に勝っておいた方がいい。
【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されず、写真説明と出典のみ記されていることがあります。その場合はhttp://japan-indepth.jp/?p=38159でお読み下さい。】
いくつかの意見をもらったのでもう少し細かく概念を説明してみたい。まず、現実はどうなっているのかということと、どのような認識で生きるべきかという二つは分けて考えるべきだろうと思う。
例えば五輪の金メダルは各競技4年に1つなので全ての人は金メダリストにはなれないが、頑張れば誰だって金メダルを取れると思って生きた方が夢もあって成長もあるので、そのような認識を持つことは勧められやすい。まず現実があり、それをどのように認識するか、がある。
もう1つ、私の競争の定義は自然淘汰だ。ここから先は私の認識と言えるかもしれないが、用意された枠よりも多くの人がそれを求める状態を競争と呼んでいる。10個しかない椅子を100人が求めればそこには競争がある。リチャード・ドーキンスの言うように、遺伝子の競争に勝ったからこそ、ホモ・サピエンスはこうして70億に繁栄した。
例えば、私たちは数億の中から、まず競争に勝ち抜いて卵子に着床し、私たちになっている。選ばれなかった精子もある。また、今日コンビニでペットボトルを買う時、いくつかの中から一つを選ぶ。値段で選ぶのかも、気分で選ぶのかも、ブランドで選ぶのかもしれない。が相手にしてみれば選ばれるための競争がそこに存在する。何かを選ぶということは、相手にとっては選ばれる競争があるということだ。
仕事とは社会への価値提供に他ならない。よほど抜きん出た才能を持った個人でない限り、自分の提供する価値と似たような価値を提供している人はどこかにいる。そのどちらかを選ぶのかは相手に委ねられている。私たちは働き先や、住居先を選ぶように、相手も誰を雇うか誰を住まわせるかを選んでいる。仕事ができているなら選ばれたということだ。選ばれたということは比較の結果、何らかの観点で競争に勝ったということだ。
▲イメージ写真 出典:Pixabay
人間は皆それぞれ違い、個性があるので競争なんてしなくてもいい。または競争で勝ち負けを決めようとすることで人は何かに縛られている。という考えは、競争とは何か同一の競技を皆で競い合い、一番二番を決めるものだという風に捉えすぎている。
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