フランス出生率、3年連続減
Japan In-depth / 2018年1月25日 10時35分
Ulala(ライター・ブロガー)
「フランス Ulala の視点」
【まとめ】
・仏の合計特殊出生率が前年度の1.92人から2.1ポイント減少し1.88人になった。
・かつて仏で出生率が上がったのは、充実した保障や育児支援よりベビーブームの影響が大だった。
・出生率を上げるには、景気回復と非正規労働者の賃金向上の方が優先度高い。
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フランス国立統計経済研究所(INSEE)によると2018年1月1日時点の人口調査で、フランスの合計特殊出生率が前年度の1.92人から2.1ポイント減少し1.88人になったことがわかりました。依然としてヨーロッパトップの合計特殊出生率ではありますが、減少するのは2015年から連続3年目となります。出生数の方も前年度よりも17,000人減少し、2017年は767,000人。
出生率が減少した原因として、オランド前政権が進めた家族手当の削減などの政策の影響があるのではという意見も上がりましたが、行われた政策は高所得者を対象としたもので、多少の家族手当削減で大きな影響が出ることは考えにくく、INSEEの人口調査と社会調査の責任者であるマリー・レイノー氏によれば、それよりもこれはベビーブーム時(1946年から1973年)に生まれた子供が出産年齢期を徐々に過ぎてきているからだと説明しています。(参考記事:INFOGRAPHIE. La France vieillit et fait de moins en moins de bébés)
一般的に日本では、フランスが高い合計特殊出生率を維持してきた理由は、恵まれた社会保障、育児支援、と言われてきたのにもかかわらず、恵まれた支援がある状態でも合計特殊出生率、および出生数の減少すると言う事実。要するに、フランスが1998年頃から出産数が上昇し一時は2.03と言う高い合計特殊出生率にまでなった一番の理由は、充実した保障や育児支援と言うよりもベビーブームの影響が大きかったと言えるのではないでしょうか。
とは言え、もちろんそれだけではありません。もしベビーブームだけが要因なら、1971年から1974年までの出生数200万人を超える第二次ベビーブームがあった日本でも、同様に2000年頃から出産ラッシュになっていたはず。しかし、日本では第三次ベビーブームが起こるどころか、かえって2000年から2005年まで出生数が減少するという事態が起きてしまいました。
なぜなら、バブルがはじけてから、就職氷河期と、出産適齢期の若者が完全に「失われた20年」に巻き込まれ、経済的理由で結婚できない若者が増えたり、結婚しても理想の子ども数をもたない家庭も増えたからです。
フランスは先進国中で最も早く、19世紀から出生率が低下し始め1930年頃から少子化対策を国家的課題とし、いろいろな研究がなされてきました。その中で不景気になり失業率が高くなれば合計特殊出生率も下がることが結論づけられていますが、まさに日本のバブル後とあてはまります。完全な失業者ではないものの、正社員として就職ができず、非正規社員が増加する状況であり、経済的に不安定な若者が増加した時期だったと言えるのです。
国立社会保障・人口問題研究所が出している、出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)を見ても、各年の「理想の子ども数を持たない理由」で一番多かったのは、「子育てや教育にお金がかかるから」という経済的な理由です。
割合の推移が表となりますが、この表に出産率の推移を並べてみてわかるのは、経済的理由で理想の子供数を持たないと答えた割合が高い年は、顕著に出産率も下がっているということ。経済的理由が子供を産むか生まないかという決断に大きく影響していることがうかがえます。
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