1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. スポーツ
  4. スポーツ総合

人の学びを待つということ

Japan In-depth / 2018年1月25日 12時12分

人の学びを待つということ

為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)

【まとめ】

・強い学びは自らなにかを発見した時に起きる。

・“自分がやって自分が発見する”という学びには時間がかかる。

・人が学ぶプロセスの側にいる場合は、本人が学ぶ迄待つしかない。

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されず、写真説明と出典のみ記されていることがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttp://japan-indepth.jp/?p=38234でお読み下さい。】

 

最近面白いことがありました。

キックボードを息子に買ったのですが、急にキックボード自体ではなく前輪のタイヤの上に乗るといって聞かなくなりました。そのキックボードは前輪のタイヤがむき出しになっているもので、当然タイヤの上に乗れば走り出すとすぐにタイヤと一緒に乗ってる自分も回転して前方に落ちてしまいます。

まためんどくさいことをと思って、一瞬やめさせようと思いましたが、少し時間もあったことですし、そのままやらせてみました。結果は当たり前ですが、何度乗っても動き出すと共に自分が前方に落ちてしまいちっとも前に進みませんでした。数回繰り返した後、息子は何事もなかったようにキックボードに乗り直しました。

その日の午後、運営している施設でまるいクッションを転がして遊んでいました。ふと見ると息子がクッションから距離をとって押しているので、なんでもっと近くで押さないのと聞いたら、”だってクッションにくっつくと前に転がっちゃうからね”と言うわけです。どうも息子は何か丸いものが回転する時にはそれにくっついているものは一緒に回ってしまう、という法則を学習したようでした。

学習というと、つい知識を教えるということを想像してしまいますが、強い学びは自らなにかを発見した時に起きます。自分からこれをやったらどうなるんだろうという仮説を持ち、かつそれを実際にやってみて結果まで見届けた学びは、深さと広がりが違います。

キックボードのタイヤに乗ってはならないという禁止事項だけ覚えたのでは、構造がわかりません。一体何が起きてどう危ないのかがいつまでたってもわからないわけです。

子供の頃、父親に絶対に運転中にサイドブレーキは引いちゃいけないと言われていましたが、どうしても気になって引いてしまい、こっぴどく叱られたのを思い出しました。でもあの瞬間サイドブレーキが何かに擦れて摩擦が起きている感触は今でも覚えています。サイドブレーキは摩擦をかけて車を止めているんだという理解が私の中で生まれました。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください