イスラムと縁遠い日本 イスラム脅威論の虚構 その1
Japan In-depth / 2018年1月29日 9時58分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・キリスト教社会のイスラム脅威論と一部ムスリムのテロ行為は表裏一体。
・日本でもイスラム信者が増加の一途。
・イスラムを正しく理解し、信者に寛容な社会を築くことがテロの抑止力となる。
【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されず、写真説明と出典のみ記されていることがあります。その場合はのJapan In-depthサイトでお読み下さい。】
日本出身の大リーガーで、イラン人の父を持つダルビッシュ有投手は、ムスリムであるとも、すでに棄教したとも伝えられる。日本人読者になじみ深い名前で、イスラムに関わる人と言われると、まず思い浮かぶのは彼で、あと、元・朝日新聞記者で、定年退職後は『週間金曜日』の編集人となった本田勝一氏くらいなものである。
写真)ダルビッシュ有投手
出典)Flickr Keith Allison
この二人の対比は面白い。ムスリムになる条件とは、出生もしくは改宗とされているからだ。出生は読んで字のごとく、両親がムスリムであった場合、子供はムスリムとされる。
キリスト教のような洗礼はない代わり、幼い頃からクルアーン(コーランは英語読みの訛り)の言葉を教え込まれるので、当然ムスリムと定義される。前述のようにイラン人を父として生まれたダルビッシュ有投手は、まさにこのケースだ。
写真)コーラン
出典)Pixabay フリー画像
いま少し具体的に述べると、ムスリムの男性は、啓典の民と呼ばれるユダヤ教やキリスト教の信者(ゾロアスター教なども含むとする解釈もある)との結婚が認められるが、ムスリマ(女性形)、すなわちイスラム信者の女性は、異教徒の男性と結婚してはならず、男性が改宗しなくてはならない。
どう考えても男女平等でなく、現代の欧米社会においてイスラムが敵視される傾向にある、ひとつの理由がこれだとも言われるが、この問題については稿をあらためる。
ただし最近の傾向として、イスラム圏の出身者でも、教育程度の高い層はリベラルな考え方をするようになり、結婚や子供の教育については、旧来の考え方に固執しない人が増えているようではある。ダルビッシュ有投手の父上の人となりは存じ上げないが、そもそも息子をムスリムとして育てていない可能性もゼロではないと思う。
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