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イスラムと縁遠い日本 イスラム脅威論の虚構 その1

Japan In-depth / 2018年1月29日 9時58分

 

もうひとつの改宗だが、イスラムの世界観では、前述のムスリムの両親から生まれた子供以外は、無神論者も含めて異教徒なので、そもそも「入信」という概念がないらしい。

 

本多氏は『アラビア遊牧民』という著作のためにかの地を取材した際、イスラムの教義への関心を深め、改宗に至ったと自ら述べている。

写真)アラビア遊牧民 (朝日文庫) 文庫 – 1984/11
出典)amazon

 

 

氏も会員であるという、宗教法人日本ムスリム教会のホームページには、改宗の手続きが述べられているが、二人以上のムスリムを証人としてシャハーダ(信仰告白の句)を唱えれば、それで改宗したと認められるそうだ。

 

このように改宗した日本人ムスリムがどれくらいいるのか、あれこれ検索をかけてみたのだが、よく分からなかった。ただ、公式フェイスブックのフォロアー数が、2018年1月の時点で3438人にとどまっているので、さほど大きな組織でないことは確実である。

 

その一方で、中東諸国やアジアのイスラム圏(バングラデシュやインドネシア)からの移民が増える昨今、日本国内のイスラム信者の数が増加の一途をたどっていることも、また事実だ。もちろん、欧米に比べれば絶対数・増加率ともに格段に少ない。

 

イングランドでは、同地で生まれた二世・三世を含めたイスラム系住民の数が、そろそろカトリックを凌駕し、イスラムが英国国教会に続く二番目に信者の多い宗教になるだろうとさえ言われている。

 

ニューヨークでは、イエローキャブとして有名なタクシーの運転手のうち、今やおよそ80パーセントを、中東系移民のムスリムが占めているそうだ。こうした背景もあり、欧米では近年「イスラマフォビア=イスラム恐怖症」と呼ばれる現象が広まり、深刻な差別問題に発展しつつある。

 

9.11=2001年9月11日に米国で発生した同時多発テロ事件がきっかけだと見る向きが多かったが、実際には1990年代からこうしたことが言われていた。旧ソ連ではもう少し早く、1980年代からイスラム系の人口増加が著しいことを背景に、将来のイスラム化を憂える声があった。

 

日本に話を戻すと、憲法で信教の自由が保障されており、行政が宗教について調査することはないわけだが、推計で国内のムスリムは5万人くらいとも8万人ほどだとも言われている。

 

写真)東京ジャーミイ                 
出典)photo by Wiiii

 

今後、欧米でイスラム過激派によるテロが繰り返されたような場合、日本にも差別感情のバイアスがかかった「イスラム脅威論」が伝播しないとも限らない。

 

詳しくは本シリーズを通じておいおい述べて行くが、欧米キリスト教社会におけるイスラマフォビアの問題と、一部のムスリムがテロ行為に走る問題は、表裏一体なのである。

 

言い換えれば、我々日本人ができるだけイスラムを正しく理解し、その信者たちにも寛容な社会を築いてゆくことが、テロへの抑止力ともなり得るのだ。

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