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トランプ政権の正しい読み方

Japan In-depth / 2018年2月10日 15時52分

第三はトランプ政権の現状と展望への認識である。トランプ大統領があまりに低い支持率のために辞任に追い込まれるのか、ロシア疑惑のために弾劾されるのか、そもそも今後どのくらいの期間、ホワイトハウスに留まることができるのか、という情勢認識である。

以上の三つのアプローチのうち最重要なのは当然、第三である。超大国アメリカの大統領の命運がどうなるのか、その現状の認識であり、展望の予測だからだ。第一も第二も、識者の側は自分自身のトランプ氏への好き嫌いや、政策への反対、賛成を主観的に述べるだけですむ。いわば、一人よがりの断定でことはすむ。

ところが、第三のトランプ大統領の今後となると、好悪の感情では当然、律しきれない。客観的な事実認識に基づく判断が欠かせなくなる。この点で日本の識者の多くはミスを冒してきた。情緒に走り、事実を視る目を曇らせたともいえるだろう。

そんな情緒的なトランプ大統領糾弾の典型例とも思える一文を最近、目にした。情報誌とされる「FACTA」の2018年2月号巻頭エッセイだった。この雑誌はその筋ではなかなかの評価の高い情報雑誌である。一般の書店では買えない年間予約購読制で、みずからは「既存メディアの報道だけでは満足できない、情報感度の高いリーダー向けの総合誌」とうたっている。実際に内容は政治、経済、社会、文化などにわたり、一般メディアにはない鋭い切れ味のスクープ記事も多い。

▲写真 FACTA 2018年2月号 出典:FACTA ONLINE

私もこのFACTAを知人から送られて、ときおり読んできた。なかなかおもしろい雑誌だと思った。だが最新の2月号の巻頭にあるエッセイ「いまここにある毒」には失笑させられた。この一文は「そして誰もいなくなる」という見出しだった。内容はトランプ大統領に対するきわめて感情的、主観的な貶(けな)しである。

エッセイの骨子を簡単に述べるならば、トランプ大統領は今年1月はじめに出た『炎と怒り-トランプ政権の内幕』(マイケル・ウォルフ著)による暴露本に耐え切れず、失脚してしまうだろう、という予測だった。その一文にはマンガふうのイラストがついていて、トランプ大統領がホワイトハウスの執務室らしい部屋から地下の闇へと墜落していく図がついていた。

▲写真 『炎と怒り-トランプ政権の内幕』(マイケル・ウォルフ著) 出典:Amazon

このエッセイはまず「いまここにある毒」というタイトルからして、トランプ氏を「毒」だと断じていた。そのうえで「そして誰もいなくなった」という著名なミステリー作家アガサ・クリスティーの作品の題名からの表現を強調するのだった。その意味はトランプ大統領もいなくなる、あるいは同大統領の回りには誰もいなくなる、ということである。

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