北の時間稼ぎに乗っかる韓国
Japan In-depth / 2018年2月21日 10時33分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
宮家邦彦の外交・安保カレンダー2018#08
2018年2月19-25日
【まとめ】
・北朝鮮の目的はあくまで「時間稼ぎ」。
・韓国は外交安全保障政策より国内政治上の利益の方が重要。
・米中の戦略的妥協がない限り、北朝鮮核問題の解決はない。
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平昌五輪が始まり、先週末は北朝鮮の「微笑外交」をどう見るかに世間の関心が集中した。今のところ状況は北朝鮮ペースとしか言いようがない。この種のチャーム・オフェンシヴはこれが初めてではなく、むしろ北朝鮮の常套手段。筆者は金正恩が果敢に動いた背景に4点あると見ている。
①経済制裁がある程度効いており、北は一時的戦術変更に迫られた、しかし、
②北は核開発を放棄する意図など全くなく、うまくいけば米韓分断、制裁弱体化が視野に入って来る
③文大統領は確信犯であり、戦争回避とオリンピック成功にしか関心がない
④されば、今後も対話促進、首脳会談で韓国を揺さぶるのが最も賢い選択だ。
北の目的はあくまで「時間稼ぎ」。
①核兵器開発の継続
②当座の経済的利益の獲得
③米韓、日米韓の連携に楔を打ち込むことで
④戦略的生き残りの道を探っている。
これに対し、韓国は確信犯の「前のめり」だ。民族感情からすれば理解できなくはないが、外交安全保障政策よりも、国内政治上の利益の方が重要なのだろう。
今後、南北融和はどこまで進むのか。一定の融和に成功することまで反対はしないが、五輪と核開発は次元の異なる問題だから、いくら対話を行っても核問題で結果は出ないだろう。核開発は北朝鮮にとって戦略問題であり、北はあらゆる機会を通じて「時間稼ぎ」を追求するに違いない。
最大のエサは「南北首脳会談」で、6月とも8月ともいわれるが、万一これが実現すれば絶妙のタイミングとなる。米韓軍事同盟に楔を討ち、経済制裁を事実上骨抜きにするには絶好の口実だ。逆にいえば、南北首脳会談を許してしまえば、日米韓は後れを取り、北朝鮮は優位に立つということだ。
対話か、圧力かという質問もナンセンス。対話のための圧力というのは正しいが、対話だけでは何も生まれない。議論をして交渉した上で妥協しなければ結果は出ないからだ。核凍結ではなく、核断念のため交渉をするためには、これまでの圧力では到底不十分。経済制裁だけでは最終的解決には至らないだろう。
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