習近平国家主席任期撤廃で米硬化
Japan In-depth / 2018年3月3日 13時2分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視 」
【まとめ】
・米国で歴代政権の対中政策は誤りだったとの認識が拡大。
・民主化促す米に、中国は「最も非民主的な」措置で応えた。
・習主席終身独裁で米中関係は波荒らしの展望。
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「習氏は終身独裁者」――
アメリカの大手紙ワシントン・ポストの2月27日付社説がこんな見出しの主張を載せた。中国の習近平政権が年来の国家主席の任期を撤廃したことへの批判的な主張だった。
中国がすでに共産党の一党独裁であることには疑問はない。その独裁体制の下で習氏がさらに自分自身の権限を強め、国内の政治的な締め付けを激しくしていることも事実である。だから中国当局の国家主席の任期に期限を設けないという新たな措置が、いまの主席の習氏を無期限にその最高権力者の座に就けておくことを可能にすることも、否定のしようがない。
以上のように考えれば、アメリカ側としては習近平氏が任期のない終身の独裁権力者となるだろうという見方をとることも不思議ではない。
▲写真 習近平国家主席 出典:中華人民共和国人民中央政府
ワシントン・ポストの同社説は、「習近平氏が国家主席に就任した5年前には中国が大衆主義的な政治や法の支配の導入へと向かうだろうという期待もあったが、現実の動きは正反対だった」と述べていた。
そのうえで最近の習政権の独裁強化や国内弾圧、対外膨張などを指摘して、非難していた。その習政権は今回の国家主席の任期撤廃で、今後に予定されていた5年の任期をも越えて、強圧な支配を続けていく見通しが生まれたわけだ。
さてここまでならば、特にアメリカだけではなく、日本でも東南アジア諸国でも生じる批判的な反応だといえよう。だがアメリカの場合、今回の中国での動きはこれまで長年の中国に対する政策が根本的に誤っていたとする認識にまで発展しつつある点がユニークなのである。中国はやはり民主主義的な方向へは動かなかった、という結論からのアメリカ側の反省だともいえる。
アメリカ側では現段階で、これまでの対中政策はまちがっていたとする主張の先頭に立つようになったのは、実はトランプ大統領自身である。同大統領は2月23日、保守系政治団体の総会で演説して、「中国は2000年に世界貿易機関(WTO)に加盟することで米国に対して年間5000億ドルもの貿易黒字を稼ぐほどの巨大な存在への道を歩むこととなった」と述べた。アメリカが中国のWTO加盟に賛成したことがまちがいだというのだ。
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