ISに「鈴木さん」を紹介したい イスラム脅威論の虚構 その5
Japan In-depth / 2018年3月3日 19時0分
別に神仏習合(神道の神と仏道の守護神は同じだという思想)を重んじたのではない。子供の時からよく知っている、町内会のおばさんが会費を集めに来たので、月額200円の支払いを拒否して波風を立てる気にもなれなかっただけの話である。町内会が、同時に氏子会としても機能していたわけだが、まあ全国的にこんなものなのだろう。ついでに言うと、両親の墓は日蓮宗の寺にあるので、お彼岸のお参りは欠かさない立派な檀家でもある。
例によって余談だが、たった今この記事を読んで下さっている読者の中に、おそらく複数の「鈴木さん」がいることと思う。この鈴木という姓も、もともとは紀州・熊野神社の伝道者が「鈴木氏(うじ)」と呼ばれたことに由来する。
熊野信仰が全国に広まるにつれて鈴木氏も全国的に増えて行き、やがて明治8(1875)年、天皇家を除く全国民が姓を名乗ることに決まった際、一斉に鈴木さんが湧いて出た(失礼!)というわけだ。
▲写真 熊野本宮大社 出典:熊野本宮大社
ここで考えていただきたいのは、日本で1,2を争うほど多い鈴木姓が、熊野信仰すなわち神道にルーツを求められるということと、なによりも当の鈴木さんの大半が、おそらくはそのような由来を知らないであろう、日本の宗教的現実である。これが、日本人の宗教観のよいところだと、私は本当に考えている。
たとえば私が、仏門に身を置きながら神社の氏子でもあったという話を、イスラム原理主義者に聞かせたら、どうなるか。「お前は信仰を裏切って200円払ったのか!」などと、しばかれるかも知れない。たかが200円で固いこと言うなよとか、ただのオツキアイじゃないかという弁明など、聞く耳を持つまい。
しかし、逆もまた真なりという言葉もあるので、新年には神社に詣でて手を合わせ、1年の平穏を祈っていくばくかのお賽銭まで出しておきながら、宗旨を問われたら無宗教と答えるというのも、相当おかしな話なのではあるまいか。浅草寺を訪れる外国人が、参拝客なのか観光客なのか、という疑問に対する答えも、ここに見いだせると私は思う。
スカーフで髪を隠した、つまり一目でイスラム系と分かる、インドネシアから来たという女性が、浅草寺の門前でTVのインタビューを受けているのを見たことがあるが、「信仰上の理由で、本殿への礼拝と有料の占い(おみくじのことか?)は見合わせましたけど、とても心地よい場所でした」と語っていた。明らかに、信仰のケジメをつけた参拝客なのである。それ以上に大事なことは、神社仏閣は誰が訪れようと一向にかまわない場所なのだということだ。
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