だから「十字軍」は憎まれる イスラム脅威論の虚構 その6(上)
Japan In-depth / 2018年3月18日 22時40分
▲写真 第1回十字軍のエルサレム侵略 出典 パブリックドメイン
こうした問題を抱えながらも、十字軍は1099年、ついにエルサレム占領を果たす。当初の、つまりコンスタンチノープルで交わされた約束では、エルサレムを占領したならば、その宗主権は東ローマ帝国に属することになっていたのだが、現実には軍団を率いてきた有力な諸侯が、エルサレム王国はじめ自らの王権を樹立した。いわゆる十字軍国家である。
▲写真 考古学を元に再現された1世紀のエルサレム 出典 パブリックドメイン
当時、エルサレムはじめシリアやパレスチナの各地方には、キリスト教徒も大勢暮らしていた。イスラムの支配下にあったことは事実だが、その支配は基本的に穏健なもので、非イスラムにのみ課せられる人頭税があったことと、役人になって出世する道が開かれていないこと(近代国家でも、公務員の採用には国籍条項を設けている国が大半である)さえ甘受すれば、信仰の自由は認められていた。
むしろ十字軍の支配下に入ってから、独自のコミュニティーが解体されてカトリックの教区に強制的に組み入れられ、喜捨の強要、早い話が財産を略奪されたりしたのである。
私が、当時のローマ法王庁はキリスト教原理主義のルーツのごとき思想的傾向を持っていたと述べたのは、具体的にはこのことを指している。
たとえ当時のエルサレムがキリスト教徒の都であったとしても、法王庁は、自分たちだけが真の聖書の民である、などといった大義名分を考え出し、結局は十字軍が攻めてきただろう、と考える人は(主にアラブ系の歴史家ではあるが)実際に多い。
……以上、第一回十字軍の経緯とその問題点について、概略のみ語らせていただいた。
ここで言う問題点とは、あくまでもイスラムはじめ侵攻を受けた側の視点でもって指摘したものである。十字軍を送り出した側には、もちろん別の論理がある。本稿の後半で、そのことを語らせていただこう。
(だから「十字軍」は憎まれる イスラム脅威論の虚構 その6(下)に続く)
トップ画像:ワシントンDCのイスラムセンター訪問中、ジョージ・ブッシュ大統領とホストの会談 2001年9月 出典 The White House
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