米新刊書が裏づけた日本防衛の時代錯誤
Japan In-depth / 2018年3月27日 9時41分
筆者は中央情報局(CIA)や国務、国防両省、さらには連邦議会で25年以上、北朝鮮の核兵器や弾道ミサイルの動きを追ってきたフレッド・フライツ氏である。同氏はいま民間研究機関の「安全保障政策センター」副所長という立場にある。本書はその安全保障政策センター出版部から刊行された。
▲写真 フレッド・フライツ氏 出典 Twitter
いまワシントンで多数、目につく北朝鮮関連の書籍や記事類の中で、この本がとくに注目されるのは、私の観察では少なくとも3つの理由がある。
第1は、北朝鮮の核とミサイルの開発の現状や経緯が類書よりずっと詳細に記されている点だった。
フライツ氏はアメリカ政府や軍や脱北者の情報を基に、北朝鮮内部の核やミサイルの施設多数をも不確実部分は不確実という注釈をつけながらも、きわめて具体的に明示していた。そもそもフライツ氏はCIA内部にあっても北朝鮮の大量破壊兵器、とくに核兵器の動向を物理的にモニターして、詳細を把握するという作業を長年、専門としてきたという。
第2は、同書がトランプ政権の北朝鮮政策を読む際に有力な指針となる点である。
フライツ氏はオバマ前政権の8年にもわたる北朝鮮への「戦略的忍耐」政策こそが、北朝鮮側の核やミサイルの開発を許容してしまったと断定する。そのうえでトランプ政権の「最大圧力」の効用を強調する。最悪事態に備えての限定的な予防軍事攻撃の具体的なシナリオをも描いていた。
フライツ氏は今回、トランプ政権の国家安全保障担当の大統領補佐官となるジョン・ボルトン氏の国務次官時代の首席補佐官だった。トランプ路線の支持者なのだ。だから本書の内容はたぶんにトランプ政権の中核の思考と重なりあっているといえるのである。
第3は、日本の視点からだが、同書が日本への北朝鮮の脅威を詳述している点だった。
▲写真 ジョン・ボルトン氏 photo by Gage Skidmore
https://twitter.com/FredFleitz/status/976964296985989120
▲ジョン・ボルトン氏のTwitter ジョンボルトン氏の国家安全保障担当の大統領補佐官就任を喜ぶツイート
ワシントンでの類書は日本への脅威を論ずることが少ない。だが本書はアメリカ自体を脅かす兵器類とは別に、日本への核やミサイルの脅威もかなり詳しく報告していた。
弾道ミサイルでは短距離のスカッドのうち西日本にも届く数十基に始まり、準中距離のノドン、中距離のムスダン、潜水艦発射のKN11など、みな日本を射程におさめ、その多くが日本に照準を合わせているという。
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