米新刊書が裏づけた日本防衛の時代錯誤
Japan In-depth / 2018年3月27日 9時41分
▲写真 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が開発した潜水艦発射弾道ミサイル。KN-11。 出典 Center for Nonproliferation Studies
そのうえでフライツ氏は北朝鮮が日本をいかに激しく敵視しているかを説明していた。北朝鮮当局の「日本列島を核爆弾で海に沈める」という昨年9月の言明を引用して、日本が北朝鮮の核弾頭ミサイルの攻撃さえ受ける可能性を指摘していた。
フライツ氏はさらにいまの日本が北朝鮮のこれほどのミサイルの脅威に対しても有効な自衛手段をまったく持たないことへの懸念を表明していた。警告でもあった。そして無防備な日本の状況について次のように指摘していた。
「日本の現憲法は日本に向けての発射が切迫した北朝鮮のミサイル基地を予防攻撃することを許さない。アメリカに向けて発射されたミサイルを日本上空で撃墜することも認めない。憲法9条の規定により、日本領土外の敵は攻撃できず、同盟国を守るための軍事行動もとれないというのだ。日本は自国の防衛を正常化する必要がある」
憲法9条に根拠をおく専守防衛、そして集団的自衛権禁止という年来の日本の防衛態勢の自縄自縛が北朝鮮のミサイルの脅威によって明らかな欠陥をさらした、ということだろう。
いまの日本では政府・自民党は北朝鮮のミサイルに対して敵基地攻撃能力の保持は憲法に違反しないという主張を表明し始めた。だが憲法9条の戦力の禁止や交戦権の禁止という明記を一読するとき、日本がいかに自衛のためとはいえ、外国への攻撃能力を持つことは禁止という意味にしか解釈できない。なにしろ憲法9条の不戦の精神をそのまま体現したような「専守防衛」という基本政策はなお健在なのである。
集団的自衛権の行使についても同様である。平和安保法制の発効で集団的自衛権はその一部が特定の条件下では行使できるというようになった。だがまだまだ二重三重の縛りがかかり、全世界の他の諸国が主権国家の自衛では自明の理とする自由な集団的自衛権の行使とは異なるのである。日本は憲法によって自国を守るという国運をかけた活動にさえ、厳しい制約を課しているのだ。
日本の現憲法はいまから72年前の1946(昭和21)年、占領米軍によって書かれた。この当時、憲法9条が課題とした日本の防衛といえば、敵の地上軍が日本領土に上陸してきて初めて活動開始というのが前提の概念だった。現在のように遠方から飛んでくるミサイルが日本の防衛を一気に崩壊させうるという常識は夢想だにされなかった。
だから72年前の戦争や防衛という概念から生まれた規制をいまの国際安全保障情勢に当てはめることは、アナクロニズム(時代錯誤)の極致だろう。日本の憲法と防衛のそんな時代錯誤はいまワシントンで刊行された書によっても裏づけられたといえよう。
トップ画像:Fred Fleitz著「迫りくる北朝鮮の核の悪夢」 出典 安全保障政策センター・プレス
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