南北首脳会談が触れなかった「人権」
Japan In-depth / 2018年4月28日 16時14分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視 」
【まとめ】
・南北首脳会談で「人権」の一言が語られることはなかった。
・北朝鮮は人権弾圧の国。日本人拉致問題、会談で言及なし。
・トランプ大統領が米朝会談で人権に言及するかどうか。
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朝鮮半島の南北首脳会談が全世界に大きな波紋を広げた。4月27日の韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との会談はまさに歴史的だったといえる。
▲写真 会談する北朝鮮金正恩朝鮮労働党委員長と韓国文在寅大統領 出典 韓国大統領府
民族の和解や平和をうたい、非核化という目標さえも掲げたからだ。だがそこで交わされた両首脳の長い長い会話でも、その後に出された長文の「板門店宣言」でも、今後の朝鮮半島の国家、そして南北朝鮮の国民のあり方を決めるうえで不可欠の、超重要な言葉が一つ、欠落していた。
絶対に避けては通れない国家のあり方を示すこの言葉がどこにも見当たらなかったのだ。この点にも今回の南北首脳会談の限界や欠陥がちらついている。
朝鮮半島の南北両首脳はこれまでには想像もつかなかった友好や親善の言葉を交わした。ジェスチュアをも誇示した。それ自体はすばらしいことだろう。だが朝鮮民族の将来のあり方などを熱心に語るなかで、決して口にされることがなかったのは「人権」という一言だった。
まる一日を費やし、文字どおり千言万語を発信しながら、現代の国家や社会のあるべき姿を規定するのに最重要な人権という概念がただの一度も語られなかったのだ。これは驚くべきこと、恐るべきことである。
▲写真 南北首脳会談 2018年4月27日 出典 韓国大統領府
北朝鮮は周知のように人権弾圧の国である。カルト的要素の強い世襲の独裁政権が強権支配をする。政権に対していささかでも批判を表明する国民は仮借なく摘発され、強制収容所へ送られる。そもそも国民のすべての家系を過去にさかのぼり、金政権への忠誠度により区分けする「階層」という差別が存在する。現代の民主主義の規範からすれば、とんでもない人権弾圧の国なのだ。
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