国が支えるフリースクール フォルケホイスコーレとは? デンマークの「人を幸せにする仕組み」5(上)
Japan In-depth / 2018年5月6日 0時0分
田中亜季(北欧研究所)
【まとめ】
・フォルケホイスコーレ(folkehøjskole:成人教育機関)の認知度が高まってきた。
・デンマーク等欧州7か国にあり、基本入学試験無、学費実質無償。
・入学者の動機は「自分が将来やりたいことを探すため」。
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5月に入り、4月から始まった新しい環境にもそろそろ馴染んできた頃だろうか。はやくも長い休日を待ち望み、自分の将来に不安をいだいている人はいないだろうか。急ぎ足で生きてきたけれど、大人だって将来についてゆっくり考える機会が欲しい。そんな大人のつぶやきを支えるような仕組みがデンマークにはある。
それが、近年の北欧ブームにのって徐々に日本での認知度が高まってきている、「フォルケホイスコーレ(folkehøjskole:成人教育機関)」だ。日本だとフリースクールといえばイメージしやすいだろうか。自然の中の寄宿学校で、クラスメイトと教師が寝食を共にする。ここを「大人のモラトリアム機関」と位置付ける人もいる。
そもそもフォルケホイスコーレは、聖職者であり学者、政治家、詩人でもあったデンマークのグルントヴィが民主主義のための全人教育を構想し、19世紀後半に開校した学校である。
▲写真 ニコライ・フレデリク・セヴェリン・グルントヴィ Painted by Constantin Hansen
▲写真 1844年設立の最古のフォルケホイスコーレ photo by Hubertus45
デンマークから端を発した民衆のための学校は、その後、北欧諸国やドイツ周辺の国々に広まった。現在では欧州、スカンジナビア諸国を含む7か国に存在しており、国ごとに教科や授業料、教育制度全体のなかでの立ち位置は異なる。なかでもデンマークのフォルケホイスコーレは、英語での授業を行う学校が多いこと、入学試験がないこと、学費が実質無償(※1)であること、と留学生への間口が広い。ちなみに子供を連れて(※2)親子で一緒に学べる学校もある。生徒たちはここで、他者と語り、暮らしながら自分自身を見つめなおす機会を得る。
学校の種類はさまざまある。刺繍やアート、スポーツを学べる学校もあれば、障がいを持つ人々がスポーツに取り組んだり共同生活を送るための学校もある。身体障がいを持つ人のためのフォルケホイスコーレ、「エグモント・ホイスコーレ(Egmont højskolen)」では、サポートが必要な学生が健常者を雇うシステムがある。この学校では、健常者はサポーターとして入学し、ノーマライゼーションが機能している環境で共同生活を送る。
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