マレーシア初の政権交代 マハティール氏首相に返り咲き
Japan In-depth / 2018年5月10日 19時50分
■ ナジブ首相は政権に未練の敗北宣言
これに対し「国民戦線」を率いた現職のナジブ首相は、9日に予定していた会見を延期、クアラルンプールの自宅に閣僚やBN幹部を集めて緊急会議を開催、予想外の敗北に動揺していることを内外に印象付けた。
▲写真 ナジブ首相 出典:Firdaus Latif
10日午前11時(日本時間同正午)から記者会見したナジブ首相は「今回の選挙結果は民主主義の結果であり、国民の決定を受け入れる」との姿勢を示した。しかし「BNの支持者、BN指導者に感謝する。我々は国民生活の向上に努め、多くの雇用を創生し、ハイレベルの経済成長を実現させた。しかし、これまでやってきたことは国民にとって魅力ではなかった」と過去の実績を列挙するなど政権維持に未練が残っていることをにじませた。
勝利した希望連盟やマハティール元首相らへの「お祝い」の言葉は一切なかったところに今回の総選挙での与野党の構図、マハティール首相と同政権で国防相などの主要閣僚を務めたナジブ首相という「師弟対決」の醜さをみせつける会見となった。
■ 大方の予想を裏切った「変革」への思い
政権与党の利点を最大限に活かしたナジブ首相のBNが選挙戦を有利に展開していたとして日本の多くのメディアなどは「与党連合有利」との見方を選挙戦終盤で相次いで伝えた。
しかし、選挙結果を見る限り野党の支持者が多い都市部だけでなく、与党の支持基盤である地方・農村部でも希望連盟候補者が票を伸ばした。さらに、伝統的にマレー人が与党を、少数派の中国系、インド系のマレーシア人が野党を支持するというこれまでの支持基盤の構図が変化したことが初の政権交代に繋がったといえる。
これは与党による「長すぎた政権運営」の結果、国民の生活費は増える一方で賃金は伸びずに生活が年々苦しくなるという国民感覚を与党が置き去りにしてきたことと無関係ではない。さらに選挙戦になってマニフェストなどで「低所得者向けの補助金の拡充」や「26歳以下の所得税撤廃」といったバラマキ政策をぶち上げたものの、「国民はもはやそんな政策には関心がない」(マハティール元首相)と指摘したように、有権者の心を取り戻すことはできなかった。
■ 最大の敗因は金権・汚職体質への失望
そして何よりナジブ首相が支持を失ったのは政府系ファンド「ワン・マレーシア・デベロップメント(1MDB)」を巡る不正資金流用の疑惑などの金権体質にあり、野党側の「ナジブ政権批判」の中心もその指摘だった。
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