拉致を置き去りにさせない方法
Japan In-depth / 2018年5月16日 7時0分
島田洋一(福井県立大学教授)
「島田洋一の国際政治力」
【まとめ】
・北朝鮮の日本非難は単純に無視しておけばよい。
・米朝首脳会談で北朝鮮が拉致問題「解決」掲げ対日接近図る可能性あり。
・日米が核とミサイル廃棄を迫るほど、北朝鮮が拉致被害者を返す可能性高まる。
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北朝鮮情勢が大きく動く中、「拉致問題が置き去りにされるのではないか」という危惧の声をよく聴く。例えば北朝鮮の次のような声明が不安を掻き立てるようだ。朝鮮中央通信5月12日付論評は言う。
安倍政権は「すでに解決した拉致問題を再び持ち出し騒いでいる。……全世界が朝米首脳会談を歓迎しているときに、朝鮮半島の平和の流れを阻もうとする稚拙で愚かな醜態だ。……(過去の六者協議においても)日本は多国間外交の枠組みの中で拉致問題を持ち出し妨害した。……(日本は拉致問題で)国際社会から同情を集め過去の清算を回避しようとしている」。
まず第一に、この手の北朝鮮の日本非難は単純に無視しておけばよい。例えば、2002年9月17日の第一回日朝首脳会談(第一次小泉訪朝)の直前まで北朝鮮は、「あらゆるテロに反対するわが国が拉致をするなどあり得ない」との趣旨を繰り返していた。全面否定である。
▲写真 第一回日朝首脳会談 出典:首相官邸
ところが首脳会談の場で一転して、金正日は拉致の事実を認めた。国内メディアを完全に統制し、都合の悪い政策転換は報じさせない独裁体制の場合、こうした豹変は何ら珍しくない。
ニューヨーク中心部とペンタゴンを襲った9.11同時多発テロ後、2002年1月29日の一般教書演説でブッシュ米大統領に「悪の枢軸」の一角と名指しされ、不安を募らせた北朝鮮が対日接近を試み、その中で拉致問題の「一件落着」を図ったわけである。
▲写真 一般教書演説をするブッシュ米前大統領 出典:Executive Office of the President of the United States
もっともその対応は欺瞞に満ちたものであり、かえって日本世論の怒りに火を付けることになった事情は改めて繰り返すまでもない。
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