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エビデンスベースの事業評価に疑問 東京都長期ビジョンを読み解く!その60

Japan In-depth / 2018年5月26日 23時43分

・施設の整備・改修や重要資産の購入等に当たり、統計データや技術的指標などのエビデンス・ベース(客観的指標)により事業の妥当性を検証する評価手法を創設しました



なんだか、しっかりやった感が満載である。これまでの東京都と違って、ずいぶんと改革されたというように見る人も多いだろう。


しかし、ちょっと待ってくれと筆者は思うのだ。都政改革本部の活動といい、これまでの東京都の「改革」を評価しているが、こうして「盛った」ものになるのは非常に残念に思う。



■ EBPMとは?


どういうことか。それは「エビデンスベース」というところだ。まず第一に、エビデンスベース=客観的指標ではない。第二に、エビデンスベースとは以下のような最近のはやりに準じた形と想定される。


定義を確認しよう。



【言葉】


「エビデンスに基づいた政策形成」(Evidence-Based Policy-Making、以下EBPM)


【定義】


政策立案や政策改定の際「科学的なデータ分析によるエビデンス(証拠)」に基づいた議論を行うべきだという考え方。


【意味合い】


・源流はEBM(Evidence-Based Medicine)。1991年に提唱され、新しいパラダイムとして医師が診察を行う際、最善のエビデンスをもとに行おうという医療の在り方。それを応用しようというもの。


・エビデンスとは治療の有効性・効果についての信頼性の高い研究結果のこと。最も厳密なものは対象者を無作為に分けて2集団に分けて行うランダム化実験。


・エビデンスにはレベルがあり、最もレベルが低いのは専門家の意見や経験。


・EBPMはプログラム評価の「進化形」。



【事例】


・アメリカオバマ政権におけるエビデンス重視の予算作成、2001年教育改革法、就学前教育の効果、少人数学級の効果。


・アメリカでは非行少年の刑務所見学プログラムの効果。


・イギリスでは就学前教育の効果。



ということである。政策評価や統計の在り方にもかかわるかなり難しい専門的なものである。しかし、東京都の取組からは、前提の知識や検討が感じられない。筆者から見ると、シンクタンクの造語、新規ビジネスのための品とも皮肉を言いたくもなるが、その理念自体はまっとうである。



■ 「エビデンス・ベース(客観的指標)による評価」


エビデンスベースについて問い合わせたところ「基準はない」とのこと。客観的指標=エビデンスベースではない。アピールするのはいいが、等身大を超えてアピールしすぎると信頼を失う。


東京都の改革は等身大であり、なかなか素晴らしいものであったはずだ。「エビデンスベース」を議論する前に、自分たちの評価制度がきちんと機能しているのかを見直してもらいたい。今後に期待したい。


トップ画像/東京都庁 出典:photo by Markus Leupold-Löwenthal


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