米朝サミットで明らかになったトランプ大統領の「内通」
Japan In-depth / 2018年6月17日 10時48分
翻って、トランプ大統領は「自分の北朝鮮との取引は米議会の承認を必要とする」との認識を示した。よく言えば、法の手続きに従うという意思表示で、悪く言えば、米国に不利益な部分の修正と北朝鮮へのさらなる要求を議会に丸投げして金正恩朝鮮労働党委員長に対する約束の責任逃れができる。
■ 中国とも「内通」か
一方、ブルームバーグ通信は、「米朝首脳会談で『勝ち組』となったのは中国だと広く考えられている」と伝えた。米シンクタンクの外交問題研究所のエリザベス・エコノミー上席研究員がいみじくもまとめたように、「中国は自らの手を煩わせることなく、最も求めていたものを手に入れた」のである。
米韓合同軍事演習が中止され、北朝鮮の非核化の口約束と引き換えに在韓米軍が撤退すれば、習近平中国国家主席が追求して止まない西太平洋地域における中国の排他的かつ絶対的な支配、すなわち「中国夢」実現の決定的な一歩となる。
米『ニューヨーク・タイムズ』紙は、「東アジアにおける中国の究極的な目標は、同地域における支配を拡張し堅固にすることであり、トランプ大統領が推進する在韓米軍の撤退は、中国の長期的な目標に合致する」と分析した。ここでも、二大超大国の一つであり、米国の最大の仮想敵でもある中国を利するトランプ大統領というイメージが表れている。
事実、トランプ大統領は知的財産権の侵害を理由に、中国からの500億ドル(約5兆5000億円)規模の輸入品に25%の高関税を課す新たな制裁措置の発動を発表する一方、習主席に個人的に頼まれて、イランと北朝鮮への通信機器の販売を禁止する米国の制裁に違反したスマホ大手の中興通訊(ZTE)に対する制裁措置を超法規的に緩和するなど、実は中国の全般的な利益を擁護・増進しているフシがある。
2016年に大統領に当選したこと自体が、米国を弱体化させようとするロシアとの内通の結果であったと疑われるトランプ氏は、口先では中国や北朝鮮やロシアなどを攻撃する。だが、やっていることの総和は、米国や同盟国の犠牲の下にこれらの国々の利益を増やすことである。
こうした態度は、トランプ大統領の「米国第一」のスローガンが、実は敵国の中国や北朝鮮やロシアへの利益供与を隠すアリバイ作りではないかとさえ疑わせるものだ。トランプ氏は、実際は米史上初の「内通大統領」なのかも知れない。
トップ画像/首脳会談後合意文書に署名するトランプ大統領、金正恩書記長 2018年6月12日 出典:facebook White House
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