トランプがCVIDを主張しなかったわけ
Japan In-depth / 2018年6月19日 1時7分
そればかりかそのプロセスも「一括妥結」ではなく、北朝鮮が主張する「段階的同時解決」(労働新聞報道)とされ、トランプ大統領の口からは米韓合同軍事演習の中止や駐韓米軍の撤退問題まで飛び出した。
ダニエル・ラッセル元国務次官補は「共同声明は従来のものから進展していない。今回の会談で金委員長の打率は10割。ほしいものをすべて手に入れた」と指摘した(2018・6・13アベマプライム)。
▲写真 ダニエル・ラッセル米元国務次官補 出典:U.S. Consulate General, Osaka-Kobe
事実、共同声明の内容はブッシュ大統領時代の2005年9月の「6カ国協議合意」にも及ばず、具体性においては韓国と北朝鮮で1992年2月に発効した「朝鮮半島の非核化に関する共同宣言」にも及んでいない。
トランプ大統領も「後先(あとさき)を考えない自身の発言」に不安を感じてか、アメリカ・ABCテレビのインタビューで「私は金委員長を信用しているが、1年後のインタビューで『私は間違いを犯した』と言っている可能性はある」と無責任な発言をしている。
■ なぜCVIDからCDに後退したのか
米朝共同声明でCD(完全な核放棄)とだけ表記した理由についてトランプ大統領は記者会見で「時間がなくて金委員長と議論しなかった」と語った。しかしトランプ大統領は記者会見に1時間以上も費やし、時間がなければ延長しても良いとまで言っていたし、金委員長もシンガポールを飛び立ったのは午後12時(現地時間)だった。時間がなかったというのは言い訳に過ぎない。明らかにトランプの譲歩であった。
▲写真 シンガポールを発つトランプ大統領 出典:facebook White House
ではこの譲歩にはどのような背景があったのだろうか。深読みすると次のようなことが考えられる。
一つ目は金正恩委員長が恭順の意を示したので、CD(完全な核放棄)とだけ表記しても非核化の検証は当然行えるだろうし、後戻りもしないだろうとトランプ大統領が判断したことだ。だがこれはあまりにも楽観的過ぎるので可能性としては極めて低い。
二つ目は金正恩委員長がCD(完全な非核化)とCVID(完全かつ検証可能で不可逆的な非核化)とは同じ意味だと誤魔化したか、北朝鮮の体質をよく知らないトランプ大統領が、現在の局面を米国の主導下にあると判断し、非核化作業の中でVとIを埋めてゆけば良いと安易に考えたかも知れない。これも可能性としては高くない。
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