トランプがCVIDを主張しなかったわけ
Japan In-depth / 2018年6月19日 1時7分
三つ目は、北朝鮮が米国を欺瞞しながら秘密裏に核の保時を続け、それが暴かれそうになった時、ちゃぶ台返しの名分のためにVとIを拒否したことだ。非核化プロセスで抜き打ち検証の無条件的受け入れなどを求められ、秘密の核保有を暴かれそうになった時、それを拒否する名分としてVを抜き、その拒否が通らなければいつでも核保有に後戻りする名分としてIを抜いた可能性がある。北朝鮮は核実験場の入り口を「爆破」しミサイル試験場を閉鎖すると伝えたが、それらは数カ月あればいくらでも再建できる。
秘密の核保有がバレて米国から嘘をついた、欺瞞したと言われればこう答えるだろう。「我々は完全な非核化に応じたが検証可能で後戻りできない非核化に応じたわけではない」と。CVIDからCDに後退したのは今の所この可能性が最も高いと思われる。
四つ目は、上三つのケースとは全く異なり、今年に入っての平昌オリンピックから南北首脳会談までの時間稼ぎ期間に、北朝鮮がすでに使用可能な核弾頭ミサイルを実戦配備し、米国の対北朝鮮軍事オプションが通用しない状況が生まれたことだ。すなわち北朝鮮が追い詰められた状況から抜け出し、米国と対等な交渉が可能となっていたということだ。この可能性も低いが、しかし完全に否定することはできない。
▲写真 米朝首脳会談 2018年6月12日 出典:トランプ大統領公式Twitter
トランプ大統領は米朝首脳会談直後の記者会見で「北朝鮮が非核化を履行しない場合、米国の軍事行動の可能性はあるのか」との質問に、「非武装地帯(DMZ)のすぐそばに2800万人が暮らすソウル(首都圏)がある」と昨年とは打って変わり「被害」の大きさを強調した。北朝鮮をCVIDでとことん追い詰めてゆく覚悟を放棄したとも取れるこの発言には、トランプ政権が続けてきた毅然とした姿勢は見られず、CVIDを諦めたような意味とも取れるニュアンスがある。だから米朝間に形勢逆転があったのではとの観測が流れるのだ。
そうであればトランプ大統領が金委員長を過度におだて上げたのも納得が行く。もしそうだとしたらCVIDは不可能であり実際の落とし所は北朝鮮の「核凍結」とならざるを得ないだろう。
筆者は、昨年末に「米国がこれまでの軍事的圧力を心理戦にとどめて、だらだらと事態を引き延ばせば、トランプ大統領は、再びクリントン、ブッシュ、オバマの過ちを繰り返すことになるだろう。それだけではない。北朝鮮核除去の最後の機会を逸したという大きな過ちを歴史に記録することになる」と予測したが、どうもその方向に事態が動いているような気がする。
トップ画像/首脳会談後合意文書に署名するトランプ大統領、金正恩書記長 2018年6月12日 出典:facebook White House
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