サミット崩壊の危機 アメリカファーストで世界秩序混乱
Japan In-depth / 2018年6月21日 22時23分
それでも首脳宣言では、
①ルールに基づく貿易制度の役割を確認し、保護主義との闘いを続ける
②ロシアのクリミア半島の併合を非難
③北朝鮮に全ての大量破壊兵器、弾道ミサイルの完全で検証可能、かつ不可逆的な廃棄を引き続き求める(CVID)
④不適切な知的財産権の保護に対処する
――などを確認、アメリカが離脱したパリ協定に対してはアメリカを除く6カ国が野心的な温暖化対策により、パリ協定をやり遂げる強い約束を再確認すると明記してアメリカ抜きでも温暖化対策を進めることを誓った。
サミットは、1973年の第一次石油危機で世界経済が深刻化し、これを放置すると各国が身勝手に動き、再び世界大戦を招くような事態を生じさせるようなことになるかもしれないという危機感から先進6カ国が集ってスタートし、1976年のプエルトリコ・サミットからはカナダが加わった。1975年11月の第1回のランブイエサミット開始以来、毎年開催され、世界経済の危機問題だけでなく、冷戦や環境、世界不況など、その時代の重要なテーマを話合い、対策をまとめて国際社会をリードしてきた会議だ。
まさにこのサミットによって世界を分析し、問題点を共有して今日まで世界を安定的に運営してきたといえる。私はこのサミットに最初から30回ほど関わり、現場で取材をしてきた。
しかし、新興国が台頭し中国やロシアの存在感も強まるうちに、サミットが世界をまとめることが段々難しくなってきた時代状況もあった。
2008年の日本が議長国を務めた洞爺湖サミットは、そんな時代の岐路に立っていたと感じさせた首脳会議だった。(詳しくは、サミットの歴史をノンフィクション風に記した拙著「首脳外交―先進国サミットの裏面史」文春新書を参照)以来、先進国の世界におけるGDP比率が低下、遂に中国や新興国の存在感が拡大し、首脳会議にオブザーバーとして参加するようになると、サミットの役割や牽引力も次第に小さくなっていった。
▲写真 北海道洞爺湖サミット(記念植樹・記念撮影に向かうG8首脳の写真) 出典:首相官邸
特に異質のトランプ大統領が2017年に登場し、多国間協議よりも2国間でディール(取引)したほうが有効と考える手法を多用するようになったため、サミットの位置づけは年々小さくなってきた。特に今年はサミット(6月8~9日)の直後に歴史的な米朝首脳会談が設定されていたこともあって、トランプ大統領のサミットへの関心は薄く、世界もまた米朝首脳会談に注目が集まっていたのでますますサミットの存在はかすんで見えてしまった。実際、メディアの扱いも非常に小さいものだった。
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