インドネシア 大学内で爆弾製造 高まるテロの恐怖
Japan In-depth / 2018年6月23日 10時42分
大塚智彦(Pan Asia News 記者)
「大塚智彦の東南アジア万華鏡」
【まとめ】
・インドネシアリアウ大学卒業生3人、反テロ法違反容疑で逮捕。
・5月国会通過の「反テロ法改正案」に対する反発が原因か。イスラムテロ組織JADとの関連も。
・インドネシアのテロは新たな段階へ。治安当局対応を迫られる。
【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては写真説明と出典のみ記されていることがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttp://japan-indepth.jp/?p=40578でお読みください。】
インドネシアの国家警察対テロ特殊部隊「デンスス88」はイスラム教の断食期間中の6月初め、スマトラ島リアウ州プカンバルにある国立リアウ大学のキャンパスで爆弾を製造していた同大卒業3人を反テロ法違反容疑で逮捕。キャンパスから爆弾4個などを押収した。
卒業生はリアウ州議会と首都ジャカルタの国会に対する爆弾テロを計画、間もなく実行に移す直前だったという。国立大学内で爆弾が製造され、卒業生がテロを準備していたことに政府は大きな衝撃を受け、全国の高等教育機関、特に大学で「テロ思想の排除と不審な学生、卒業生の割り出しと警戒監視」の動きが広がっている。
▲写真 国立リアウ大学 出典:RiauUniversity
▲写真 デンスス88 出典:Indonesia'sEliteForces
インドネシアでは5月13日に東ジャワ州のスラバヤでキリスト教会3か所、同月14日、16日にはスラバヤ市警本部やリアウ州警察本部などを狙った爆弾テロ、襲撃事件が連続して発生、多数の死傷者を出した。これを受けて国会は長年の懸案だった「反テロ法改正案」を5月25日に可決し、対テロ対策での警察権限の強化とテロとの戦いに国軍の参加を容認することになった。
今回のリアウ大学卒業生のテロはこうした反テロ法強化に反発して、立法機関である州議会と国会をその標的に選んだものと見られている。スラバヤのキリスト教会の爆弾テロでは子供を巻き込んだ家族による自爆テロという、インドネシアでは新たなテロの手法が注目され、テロの質的な変容が指摘された。
そして今回は宗教施設や治安組織、人が集まるソフトターゲットに加えて州議会や国会といった立法府がテロの対象となった。加えて大学という教育機関の現場でテロが計画され、爆弾が製造されたようにインドネシアのテロはさらに新たな段階に入ったといえ、政府、治安当局は多方面にわたり多様な対テロ対策の実施が急務となっている。
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