会談は何故開かれた?木を見て森を見ずの愚 米朝首脳会談総括 その1
Japan In-depth / 2018年6月27日 7時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視 」
【まとめ】
・1994年米朝核枠組み合意から両国のやりとりは欺瞞や謀略が最大の特徴だった。
・共同声明に具体性がないからといって全体の枠組みを軽視する事は短絡。
・朝鮮半島をめぐる米朝関係の枠組みでは森が大きく変わった。
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アメリカと北朝鮮との首脳会談が6月12日、シンガポールで開かれた。アメリカのドナルド・トランプ大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との会談である。この会談の開催は文字どおり全世界に巨大な波紋を広げた。衝撃波を投げたといえよう。
なにしろ長年、たがいに激烈な攻撃や誹謗の言葉を浴びせるだけでなく、実際の戦争行動さえ起こしかねない軍事対決を続けてきたアメリカ合衆国と朝鮮民主主義人民共和国の元首同士が固く握手をしたのだ。
この会談はいったいなにを意味するのか。どんな結果をもたらしたのか。その結果はどの国に利得をもたらし、どの国に損失を生むのか。こうした諸点をめぐり、文字通り、百花繚乱の言説が入り乱れる。ここでは私なりの総合的、立体的な評価を試みたい。
私はワシントン駐在の新聞記者としてアメリカと北朝鮮との間の駆け引きは1990年代から取材対象としてきた。数えきれないほどの記事を書いてきた。1994年に発表された米朝核枠組み合意のころからである。
私自身が体験した米朝間のやりとりは、欺瞞や謀略が最大の特徴だった。より具体的に述べるならば、北朝鮮がウソをつき、アメリカ側をみごとに手玉にとってきた歴史とさえいえた。
なにしろ北朝鮮はアメリカを相手とする交渉では、アメリカに楽観させ、幻滅させ、失望させ、そしてまた楽観させるというプロセスの繰り返しだった。楽観→幻滅→失望→楽観という邪悪のサイクルだったのだ。この点では日本もその邪悪のサイクルの犠牲になってしまったといえよう。
そんな北朝鮮の最高指導者たる若き独裁者がこれまでの対外姿勢のパターンを打ち破って、国外に出て、アメリカの大統領と一対一の会談をしたのだ。この首脳会談が歴史的な意味を持ったことは疑いがないだろう。なにしろ「初めて」ばかりだからだ。
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