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会談は何故開かれた?木を見て森を見ずの愚 米朝首脳会談総括 その1

Japan In-depth / 2018年6月27日 7時0分

この歴史の変革を思わせる会談の結果はまず6月12日の当日に明らかになった米朝共同声明に集約された。そしてその後にトランプ大統領が記者会見を開き、今回の動きの意味を自由奔放に語った。

この米朝両国首脳の会談と合意を全体としてどう解釈すれば、よいのか。

まず両首脳の握手が象徴する歴史的な新たな枠組みと潮流をみるべきである。会談後の関連各国の官民での論評は多様であり、この会談の共同声明の具体性が不十分だなどとする批判も少なくない。

しかし木だけを見て、森を見ない愚に陥ってはならない。この会談の前と後とのアメリカと北朝鮮との関係の変貌、そして東アジア情勢全体の変化を直視しなければならない。その変貌や変化の裏にはたとえ虚構の要素があっても、まちがいなく大きく変わった部分の存在は否定できないだろう。

アメリカと北朝鮮は長年、敵対関係にあった。つい最近の2018年冒頭まで戦争さえ起こしかねない対決状態にあったのだ。北朝鮮はアメリカ本土に届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)での核弾頭発射の能力を喧伝し、アメリカは厳しい経済制裁に加えて、北朝鮮の核やミサイルの拠点を破壊する軍事攻撃の可能性を語り続けた。

とくにトランプ大統領と金正恩委員長の間では戦争にも通じかねない過激で険悪な言葉が交わされた。「チビのロケットマン」「老いぼれ」という類のののしり合いだった。

▲写真 首脳会談に臨む金正恩北朝鮮委員長とトランプ米大統領 2018年6月12日 出典:The White House Facebook

だがいまやその二人が固く手を握り合い、「平和」とか「信頼」という言葉を口にするのである。文字どおりの米朝両国の相互への姿勢の180度の転換だった。その転換がたとえみせかけだけであっても、いまの和平的な言動自体は否定の余地がない。北朝鮮側では現にミサイル発射を止め、核施設の破壊までしてみせる。

軍事対決から和平協調への大転換という、この基本構図の大変化を無視することはできない。その基本構図から目をそむけたまま、米朝共同声明の記述に具体性がないからとして、全体の枠組みを軽視することは、短絡といわざるを得ない。

朝鮮半島をめぐる米朝関係の枠組みでは森が大きく変わったのだ。山が動いたと評してもよい。アメリカという巨大な山と、北朝鮮という小さいが危険な爆発力を秘めた山と、ともに大きく、かつ激しく動いたのだ。

(その2に続く。全5回)

トップ画像/首脳会談に臨む金正恩北朝鮮委員長とトランプ米大統領  2018年6月12日 出典:ドナルドトランプFacebook

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