W杯、明文化されぬルール
Japan In-depth / 2018年7月8日 0時7分
一番に思い出される事例は、明徳義塾の松井選手への5打席連続敬遠ではないでしょうか。ルールに反したわけでもないプレイですが、多くの批判を呼びました。まさにルールには書かれていないけれどもマナーとして認識されている領域だったのだろうと思います。
一方で、社会の破壊的イノベーションはこの領域で起きることが多いというのも確かです。例えば、違法すれすれ(地域によっては違法だったのかもしれませんが)の部屋貸しビジネスだったairbnbが宿泊の世界を変えていこうとしていますし、Uberも然りです。ひっくり返せばunwritten ruleの領域に踏み込まない文化ではイノベーションが生まれにくいとも言えるのではないでしょうか。
フォズベリーという背面跳びを開発した方にあったことがありますが、最初はベリーロールの変形に見えて、ルールには書かれていないが美しくない飛び方だと批判されたこともあったそうです。今では五輪の舞台で、背面跳び以外の高跳び選手を見かけなくなるほどスタンダードになりました。
▲写真 背面跳びでバーを越える走り高跳びの選手 出典:Jamie Nieto
最後に、そもそも勝利条件とは何かが実はスポーツははっきりしません。いえ、スポーツだけでなくても社会において勝利条件はいつも複雑だと私は感じています。勝利条件とは目的や目標といってもいいと思います。例えば、チームを勝たせることだけに勝利条件を置いた高校の部活チームがあるとします。しかも勧誘が禁止されていて、部員もやる気がない部員(少なくともコーチの就任時点では)が多いとします。そうなると、短期的にやる気のない人間を動かすには恐怖を与えるという手は実は有効です。ところが多くのチームはこのような手段はとりません。なぜならば恐怖によって支配することは選手の人生を広げることとは反対の手法だからです。つまり勝利条件はこの場合チームの勝利と、選手の生涯にわたっての成長の二つあるということです。
そして、これ以外にも、あるべきスポーツマンの姿、ステイクホルダーの満足、競技全体の発展、代表する学校の校風など、たくさんの勝利条件があり、この中で日々意思決定をしています。
▲写真 アメリカンフットボールをする子供達 出典:pixhere
ところが勝利条件が多すぎる人は、すべての勝利条件が完全に一致する場面はほぼないわけですから、意思決定に迷いが生じます。そして、目的を絞り込めず戦略や戦術がぶれたり弱まったりします。さらにその下にいる皆も混乱します。故に多くの組織は理念などを設定し勝利条件を絞り込んでおくわけです。
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