トランプ大統領の使い走り ポンペイオ国務長官
Japan In-depth / 2018年7月10日 8時39分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2018#28
2018年7月9-15日
【まとめ】
・ポンペイオ国務長官の訪朝はとても成功とはいえない。
・北朝鮮は「朝鮮半島の非核化」を実現する為、米の核放棄を要求しても自分の核放棄はコミットしないはず。
・トランプ氏にとって中間選挙まで北朝鮮との交渉は進展している必要がある。
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今週は先週訪朝したポンペイオ米国務長官の話を取り上げる。正直なところ、筆者はこの本来保守強硬派ながら、北朝鮮の理不尽な態度に席を立つことも出来ない哀れな国務長官に深い同情を禁じ得ない。トランプ氏の信頼は厚いだろうが、所詮彼は中間選挙まで対北交渉継続を最重視する大統領の「使い走り」でしかないからだ。
同長官は訪朝を「極めて生産的だった」と評価、「北は完全で検証可能、不可逆的な非核化(CVID)にコミットすると再度約束した」とまで言い切った。これに対し、北朝鮮外務省報道官は「実に遺憾だった」と強く反発しただけでなく、「一方的でギャングのような非核化要求だった」とまで述べた。およそ「訪朝成功」とはいえないだろう。
これまで北朝鮮と米側の間で如何なるやりとりがあったのだろうか。色々調べている内に、2年前ではあるが興味深い公式声明を見付けた。といっても、元韓国大統領府国家安全保障室次長、駐豪大使、外務第1次官、六者協議の韓国首席代表でもあった趙太庸氏(現在慶応大学)に教えてもらったことなのだが、これが意外に面白い。
この文書、日付は2016年7月6日、(北)朝鮮政府代弁人の発表だ。この中で北朝鮮は自国が「主張する非核化は朝鮮半島全域の非核化であり、これには南の核廃棄と南朝鮮周辺の非核化が含まれている」と述べつつ、「朝鮮半島の非核化」を実現するための諸条件につき次の通り述べている。(参考まで【】内に筆者のコメントを付す。)
● 米国と南朝鮮当局が朝鮮半島の非核化に一抹の関心でもあるなら、次のようなわれわれの原則的要求から受け入れるべきだ。
【これは2016年7月の話だから、恐らく今回も北朝鮮は米国に似たような要求をしている可能性が高いだろう】
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