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タイで増える“嫌中” 中国は意趣返し?

Japan In-depth / 2018年7月18日 16時49分

同時期、国際的には、タイ北部チェンライの洞窟に閉じ込められたサッカー少年らの救出劇が注目されていた。中国国内では、そのニュースへの関心の高さと比較して「生存が確認された洞窟の少年より、行方不明の中国人観光客の救出にどうしてタイや国際社会は動かないのか」と不満を募らせる声があがった。しびれを切らした中国からの捜索チームも参加してタイ海軍との捜索活動が始まり、これまでに46人の死亡を確認、残る行方不明者は1人となった。


中国や中国人の怒りを増幅させたのは、タイのプラウィット副首相が7月9日の会見で「遊覧船は中国のツアー会社が運営するものであり、彼らは天候悪化の警告を無視して出航した。責任は彼ら(中国側)にあり、自分たちで問題を解決しなくてはならない」と事故の責任を中国側に押し付ける趣旨の発言をしたことだった。


さらにタイのテレビでアナウンサーが「中国人が自分で中国人を連れてきて死なせた」という趣旨の発言をして後に謝罪に追い込まれる「事件」も起き、中国人の感情を大きく傷つけた。


タイの報道では、確かにツアーを運営した会社はタイ人名義になっているが中国人の会社だという。しかし、中国側は「それが事実だとしてもタイ政府はタイを訪れる世界中からの観光客の安全を確保する責任がある」(中国英字紙チャイナ・デイリー)などと指摘して、タイ政府の「消極的姿勢」「責任転嫁」を厳しく指弾する事態となっている。


 


■ 政府間は一帯一路、民間は嫌中傾向


こうした批判合戦の背景には、タイでの中国人観光客の評判が年々悪くなっていることが指摘されている。中国人観光客は団体行動が基本で、中国系ツアー会社により中国人通訳、中国人ガイドが付き添い、食事は中華レストラン(バイキング形式が多い)、土産物屋も中国系タイ人が経営する店などが中心で、地元タイにはほとんど金を落とさない。


加えてタイの仏教寺院での唾吐きや用足し、所かまわずの飲食、祈りの場での大声での会話、撮影禁止や立ち入り禁止の無視など、観光客としての基本的なマナーの欠如が、敬虔な仏教徒であるタイ人の「堪忍袋の緒」を切っているのだという。



▲写真 タイの仏教僧 出典:Pixabay


一方の中国側にしてみれば、2017年に約1000万人の中国人観光客がタイを訪問しているという実績を背景に団体旅行客を中心にタイ各地に観光客を次々に送り込んでいる。


タイでは中国の習近平政権が推し進める「一帯一路」構想の下、不動産開発や都市インフラ整備などに多額の投資が行われており、2018年1月~3月の中国のタイへの総投資額は前年比1500%増となるなど、中国はタイ軍政との関係をより緊密化させている。


政治経済的な両国関係は良好というより「熱烈歓迎」の状態といえるが、民間こと観光業界では「嫌中ムード拡大」というのが現状といえるだろう。そんな現状にも関わらず、プーケットを除くタイの主要観光地には今日も多くの中国人観光客が押し寄せているという。


トップ画像:タイ・プーケット島のビーチ 出典 Pixabay


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