非核化交渉の障害はトランプ氏
Japan In-depth / 2018年8月9日 1時11分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
宮家邦彦の外交・安保カレンダー2018#32
2018年8月6-12日
【まとめ】
・北朝鮮は米への飴と鞭で「非核化」切り札の温存図る。
・交渉の最大障壁はトランプ氏。北朝鮮は氏を利用し尽くすつもり。
・日本は「最大限の圧力」の立場維持を。米中間選挙後に動きあり。
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あの「歴史的」な米朝首脳会談から2カ月経ったが、北朝鮮非核化交渉の進展はあまり芳しくない。筆者の周辺では、今回の首脳会談を北東アジア和平の「重要な第一歩」などと礼賛するばかりか、「鉄は熱い内に打て」とばかり、日本も対北朝鮮政策を変更すべではないかといった驚くべき意見すらあった。
しかし、本当に北朝鮮の「鉄」は「熱かった」のだろうか、そもそも打つべき「鉄」はあったのか、「鉄」よりも打つ「ハンマー」の方が先に熱くなってしまったのではないか。こんなことをジャパンタイムスの英語コラムに書いてみた。ご関心の向きはご覧頂きたい。
6月12日の米朝首脳会議直後、筆者は米朝交渉をボクシングに例えた上で、1Rは北朝鮮の粘り勝ちだが、2R目は未知数と書いた。しかし、今振り返ってみると、2Rはまだ始まっていない気がする。そもそもリング上では何も起きていないのではないのか。こんなことで3Rは始まるのか。北朝鮮の意図を改めて推測しよう。
北朝鮮には非核化する気が全くないとまで言い切る自信はないが、少なくとも「北朝鮮の核兵器と開発計画の廃棄」なるものは最後の切り札として、交渉の最終段階まで温存する可能性が高いのではないか。北にとってトランプ氏のような交渉相手は飛んで火に入る夏の虫であり、最後まで利用し尽そうとすることは間違いなかろう。
▲写真 トランプ米大統領 出典:The White House Frickr
政治的に見れば、トランプ氏は中間選挙まで北朝鮮との交渉について失敗を認めることができない。あくまで成功していると言い続けるしかないからだ。そのような状況の下で北朝鮮が「切り札」を温存するには、飴と鞭が必要だ。米兵士の遺骨返還は飴であり、ミサイル開発報道は鞭を象徴している。こうした傾向は当面続くだろう。
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