ボルトン的発想のルーツ
Japan In-depth / 2018年8月22日 19時58分
島田洋一(福井県立大学教授)
「島田洋一の国際政治力」
【まとめ】
・ボルトン米大統領補佐官、4月の南北首脳会談で金正恩委員長が1年以内の非核化に合意したと発言。
・ブッシュ政権下、ボルトンは大量破壊兵器拡散問題専門家の地位確立。
・ボルトン氏の官僚組織に対する不信は根強い。
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8月19日、米ABCテレビのインタビューに応じたジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)が、4月27日の南北首脳会談において「文在寅大統領が1年以内に(非核化を)やろうと言い、金正恩がイエスと答えた。そう文大統領から報告を受けた」「従って、北が非核化の戦略的決定をして1年以内という話は、南北がすでに合意したところのものだ」と明らかにして話題になった。
韓国政府が困るのを見越した上で、「米朝の仲介者」を気取るのは許さない、当事者意識を持って北に臨めという文在寅大統領へのプレッシャーと言えよう。いかにもボルトンらしい言動である。私はボルトンと6回ほど面談したことがあるが、誰であれ宥和主義者の誤魔化しを、ユーモアを交え、遠慮なく、快活に叩く姿勢が印象的だった。ここでボルトンという人物のルーツを見ておこう。彼の発想を理解する上で重要である。
ボルトンは1948年11月20日、米東部メリーランド州ボルティモアで、両親共に中卒というアイルランド系の一般家庭に生まれた。父は夜間の消防士の仕事に加え、昼間も機械工として働き一家を支えた。ワシントンの政界を伝統的に支配してきたいわゆる東部エスタブリッシュメント(既存エリート層)とは縁遠い存在であった。
高校時代の1964年、ボルトンは共和党右派のバリー・ゴールドウォーター上院議員の大統領戦に運動員として関わっている。ゴールドウォーターは現職のリンドン・ジョンソン(民主党)に敗れたものの、その「信念を明らかにする勇気」(ボルトン)で若年保守層を強く鼓舞し、後のレーガン大統領誕生への地ならしを行った。
▲写真 次期大統領選への不出馬を表明するリンドン・ジョンソン(1968年)出典:U.S. National Archives and Records Administration
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