沈没船違法回収の中国に非難囂々
Japan In-depth / 2018年8月30日 0時33分
大塚智彦(Pan Asia News 記者)
「大塚智彦の東南アジア万華鏡」
【まとめ】
・太平洋戦争で沈没の英軍艦などを中国が屑鉄として回収の疑い。
・戦時中沈没の日本船も回収か。世界からの非難に中国側は否定。
・中国船による沈没船の違法解体・回収防止が課題。
【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て見ることができません。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=41742でお読み下さい。】
太平洋戦争中に東南アジアで日本軍との戦いで撃沈され、海底での永久の眠りについていた英海軍の軍艦や巡洋艦などを中国が勝手に屑鉄として回収、持ち去っていた疑いがあることが分かった。沈没した軍艦の中には艦と運命を共にした将兵の遺骨が多く残されており、英軍関係者のみならず世界各国の海軍、海運関係者などから「戦死者の墓を暴くような許されない行為」との批判が沸き起こっている。
特に1941年にマレー沖海戦で日本の航空部隊による攻撃で沈んだ英海軍の戦艦「プリンスオブウェールズ」は「レパルス」と並んで当時を代表する軍艦で、戦時中、英海軍の戦死者としては最高位のトム・フィリップ提督も乗員326人と運命を共にしている。
▲写真 トム・フィリップ提督 出典:Bassano Ltd
それだけに中国籍のクレーン船による海底の戦艦回収は単なる鉄資源の無断搾取だけでなく、「沈船は乗組員の墓標である」との海の男たちの国際通念を踏みにじるものと言える。
ウィリアムソン英国防相は「戦争の遺物はそのまま残されるべきであり、艦内に残る遺体もその安らかな眠りを妨げられるべきではない」と怒りの声を挙げている。
▲写真 ウィリアムソン英国防相 出典:英国防省ホームページ
国連国際サルベージ条約では「沈没軍艦から略奪すること」は禁止されている。このため沈没軍艦周辺に潜るダイバーも軍艦に触ることが禁止されているほどだ。さらに英、インドネシア、マレーシアの国内法にも違反する行為であると中国への非難が強まっている。
■ 巨大な斧で分断して吊り上げ回収
英紙「デイリーメール」(※Web版)が8月18日に報じたところによると、中国の海運会社が屑鉄として回収した形跡がある英海軍の艦艇は1941年のマレー沖海戦や1942年のスラバヤ開戦沖などで沈没した10隻。いずれも沈没海域はマレーシアの東海岸のナツナ海、インドネシア・ジャワ島の北に広がるジャワ海などである。
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