沈没船違法回収の中国に非難囂々
Japan In-depth / 2018年8月30日 0時33分
「プリンスオブウェールズ」「レパルス」の他に10隻の中には1942年2月14日にシンガポールから脱出する女性や子供も乗船した英海軍艦艇「ティエン・クワン」(296人が犠牲)、パトロール船「クアラ」(200人が犠牲)など一般市民が乗船していた艦船も含まれている。マレーシアの調査機関などによると、10隻の各艦船はほぼ全てが回収の被害に遭っているという。
またインドネシア・ジャワ島北のスラバヤ沖海戦で沈没した有名な英重巡洋艦「エクセター」も被害に遭っているというから事態は深刻だ。
▲写真 エクセター 出典:Unknown sailor of Royal Navy
同紙の報道によると、中国系会社が所有するクレーン船が当該海域で船上から重さ約50トンという大きな斧型の錨を海中に投じて、海底の沈没艦船を分断、細かく解体した上でクレーンで吊り上げる方法で艦船の「鉄くず」を回収し、中国国内に運んで鉄売買の流通ルートで売られているという。
■ 中国の会社は違法行為を全面否定
同様の事例は2017年1月にマレーシア東部ボルネオ島コタキナバルの北約60キロのウスカン湾でも報告されている。同湾に突然現れた中国船籍のクレーン船が1944年に米潜水艦の魚雷攻撃で撃沈された海底に眠る日本の貨物船3隻の船体を解体してほぼ全部を持ち去ったというのだ。
ダイビングスポット、漁礁として観光、漁業資源でもあった貨物船だけに地元のダイバー組織や国立マレーシア・サバ大学(UMS)関係者などがクレーン船に激しく抗議した。しかしクレーン船の中国人船長は「UMSの依頼を受けた調査である」と虚偽の主張を繰り返して作業を続けたという。
英海軍の沈没艦船の回収を行っていたとされる中国の会社は複数のクレーン船を所有し、作業中などは無線装置、受信信号に応答するトランスポンダーなどをオフにして位置を探知されないようにするなど極めて悪質で確信犯だとマレーシアなどの調査機関は指摘している。
中国の「ハイ・ウェイ・ゴン」「フジアン・ジアダ」など関与が疑われている会社はいずれも「法律に違反するようなことは一切していない」と英海軍艦艇の解体回収との関わりを全面的に否定している。
特に「フジアン・ジアダ」はデーリーメールの取材に対し「悪意に満ちた誤報である」とした上で「我々は輸出業者であり、中国を出港した時点で仕事は終わっている。軍艦の回収は別の会社がやっているのではないか」と全面否定と責任転嫁のコメントを出している。
英政府は沿岸国であるインドネシアやマレーシア政府と協力して今後早急になんらかの手段を講じる道を模索しようとしている。さらに中国のクレーン船は主に中国国旗を掲げているが、時にはカンボジア国旗やモンゴル国旗を掲げ、船名も頻繁に変更されているため、そうした関係国との協議も必要になってくるという。
インドネシア周辺海域には現在も479隻の沈没船があり、今後中国船による違法解体・回収を防ぐことがジョコ・ウィドド政権の課題となっている。
トップ画像:プリンス・オブ・ウェールズ(1941年)出典 U.S.Navy
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