米が朝鮮戦争終結宣言に応じぬ訳
Japan In-depth / 2018年9月1日 22時48分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視 」
【まとめ】
・北朝鮮が朝鮮戦争終結宣言要求。米は「イエス」と言わず。
・米軍の韓国駐留の意味が喪失し、「核の傘」空洞化の恐れも。
・終戦宣言なら米韓同盟は骨抜きに。北朝鮮非核化が遠のく。
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北朝鮮の非核化問題はなおアメリカと北朝鮮との間で屈折したやりとりが続く。韓国、中国、日本までも巻き込み、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が核兵器を完全に放棄するのかどうか明確な展望は、まったくみえてこない。その不透明なプロセスのなかで確実な動きの一つは北朝鮮が朝鮮戦争の公式の終結宣言をアメリカに対して求めていることである。
朝鮮戦争は実際に戦闘は終わっていても、厳密には休戦、あるいは停戦の状態であり、決して終戦ではない。その状況に対して完全な終戦をまず戦争の当事者たちが宣言しあおうというのが北朝鮮の要求である。だがアメリカ側は応じない。トランプ政権は明確な「ノー」こそ表明しないが、決して「イエス」とはいわない。これはいったい、なぜなのか。
▲写真 板門店では現在も国連軍と北朝鮮軍の対峙が続く 出典:flickr
この朝鮮戦争の終戦宣言がどうなるのかは、一見、いま全世界が最も強い関心を向ける北朝鮮の核兵器完全放棄の見通しとは直接には結びつかないようにもみえる。北朝鮮がこれほど強く求めることならば、アメリカはまずそれに応じてもよいのではないか。応じることが北朝鮮を軟化させ、核兵器放棄にも役立つのではないか。そんな疑問があっても自然だろう。
実際に日本国内の世論や識者の意見をみると、アメリカと北朝鮮がまずこの終戦宣言、あるいは平和協定の調印に合意すべきだと示唆する向きが多い。トランプ政権が「終戦」とか「平和」という概念にさからっているとして批判をする向きもある。トランプ政権はなぜ応じないのか。
この疑問に対するわかりやすい答えを最近、ワシントンで聞いた。なんだ、そんな簡単なことだったのか、と感じさせられた。私なりの答えは持ってはいたが、これほど簡潔にその説明ができるのかと感嘆させられる体験をした。ジャーナリストの活動は古い言葉ではあるが、できるだけ多くの場所に出て、できるだけ多くの人の話を聞くことが欠かせないということだろう。イヌも歩けば棒に当たる、というのは、適切な類似の表現かどうかわからないが、つい思い出す言葉である。
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