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米が朝鮮戦争終結宣言に応じぬ訳

Japan In-depth / 2018年9月1日 22時48分

ワシントンの主要シンクタンクの「ブルッキングス研究所」が8月22日に開いた『米韓同盟を再考する(Reimagining the U.S.-South Korea alliance)』と題するシンポジウムだった。民主党系のブルッキングス研究所で安全保障問題を担当するマイケル・オハンラン氏が同研究所の朝鮮問題専門家ジュン・パク氏と「戦略国際問題研究所」で日本や朝鮮半島の諸問題と取り組むマイケル・グリーン氏を招いての討論が主体となった。



▲写真 マイケル・グリーン氏 出典:CSIS Homepage


グリーン氏は本来は共和党系の専門家で、二代目ブッシュ政権では国家安全保障会議のアジア部長として活躍した。トランプ政権とはやや距離をおくが、同政権の北朝鮮政策は熟知する人物である。パク氏は韓国系米人女性で、CIAに北朝鮮問題専門家として数年、勤務した後、ごく最近、ブルッキングス研究所にやはり朝鮮問題担当の研究者として受け入れられた。


さてこのシンポジウムの主題はアメリカと北朝鮮が和解を進めていくと、アメリカと韓国とのいまの軍事同盟は不要になってしまうのではないか、という疑問だった。だがその討論の過程で私の興味をとくに惹いたのは朝鮮戦争の終結宣言についてのグリーン氏の説明だった。


質疑応答のセッションで北朝鮮が熱心に求める朝鮮戦争の終結宣言にアメリカが応じないのはなぜなのか、という質問が出た。それに対する回答としてグリーン氏は次のように述べたのだった。



「もしアメリカがこの段階で北朝鮮との戦争状態が完全に終わったと宣言することは長年の敵対状態の終わりとも解釈されます。米朝の新たな平和協定ということにでもなると、まずいまもきちんと機能している米韓同盟の正当性に影響が出ます。アメリカにとっても韓国にとっても北朝鮮はもう軍事脅威ではないのだから米軍が韓国に駐留する理由がないという主張を生むわけです」


「もう一つ、米韓同盟の効用である韓国にとっての『核の傘』も空洞化される恐れがあります。アメリカが北朝鮮の核兵器をもう懸念しない、北朝鮮自体が核の脅威ではない、ということになれば、米韓同盟によるアメリカの韓国への拡大核抑止が無用という事態にもなりかねない。このことは同時に北朝鮮の長年の主張である『朝鮮半島の非核化』に勢いを与えることなる。そうなると米側が最も強く求める『北朝鮮の非核化』が遠ざかる危険も生まれます」



要するにいま米朝で戦争終結宣言をすれば、米韓同盟が骨抜きになり、北朝鮮の非核化も実現が難しくなる、という説明なのだ。グリーン氏は前述のようにトランプ政権の一員ではないが、トランプ政権のアジア関連の安全保障政策を熟知する立場にある。


トランプ政権が朝鮮戦争の終結宣言には応じないのは、以上のような、わりに簡単な理由からだということである。


トップ画像:米朝首脳会談(2018年6月12日 シンガポール)出典 ホワイトハウスFacebook


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