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水害対策に独居高齢者の視点を

Japan In-depth / 2018年9月4日 0時16分

水害対策に独居高齢者の視点を


上昌広(医療ガバナンス研究所 理事長)


「上昌広と福島県浜通り便り」


【まとめ】


・西日本豪雨、死者・行方不明者を併せ231人の被害者出す。


・岡山県倉敷市真備地区、死者の大半が70歳以上だった。


・高齢化進む日本では独居高齢者の視点に立った災害対策が必要。


 


【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て見ることができません。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=41815でお読み下さい。】


 


8月が終わった。発生した台風の数は9個。観測史上3番目の多さだった。大雨に悩まされた夏だった。今夏、最大の大雨が西日本豪雨であることは論を待たない。6月28日から7月8日にかけて、西日本を中心に全国を襲った。死者・行方不明者を併せて231人の被害者を出した。


特に被害が大きかったのは、岡山県倉敷市内の真備地区だ。倉敷市の被害者は51人だが、死者のほとんどが、真備地区の住民だった。特記すべきは、死者の大半が高齢者だったことだ。実に41人が70歳以上だった。自然災害で高齢者が亡くなるのは、珍しいことではない。体力がない、逃げ遅れるなど、多くの原因が考えられる。ただ、真備地区の被害状況は際立っている。



▲写真 岡山県で入浴支援・給水・災害廃棄物集積等に従事する陸上自衛隊員 2018年7月15日 出典:facebook 陸上自衛隊第三師団


医療ガバナンス研究所で学ぶ東京大学医学部3年生の辻有恒君が、公開データを用いて、この問題を調査した。辻君の調査によると、60歳未満の死亡率を1として、70歳以上の死亡リスクを評価したところ、真備地区は17となった。ちなみに、東日本大震災は5、新潟県中越沖地震は9、九州北部豪雨は6だった。他の大規模災害と比較して、真備地区で高齢者の死亡率の高さが際立っていることがわかる。


では、真備地区の特徴とは何だろう。それは高齢化が進んでいることだ。70歳以上の割合は、真備地区の24%に対し、前出の3つの被災地は東日本大震災18%、新潟県中越沖地震15%、九州北部豪雨18%だった。真備地区で高齢者の死亡率が高かったことと、この地区の高齢化率が高かったことには関係があるのだろうか。


そもそも、高齢者は、なぜ、災害時に逃げ遅れるのだろう。身体能力が低下していることとは無関係でないだろう。ただ、それだけで、この問題は説明できなそうだ。なぜなら、亡くなった人の9割が自宅で見つかっているからだ。このような人たちは、そもそも避難しようとしていない。


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