瀕死の中東和平プロセス
Japan In-depth / 2018年9月5日 10時22分
▲写真 米のエルサレムへの大使館移転に抗議してフェンスを壊すパレスチナ人 ガザ地区 2018年5月14日 出典:Voice of America
欧米の報道は、失うものをまた一つなくしたパレスチナ側の米国やイスラエルに対する反発が更に高まると見ているようだが、それは結果に過ぎない。今回の米国の動きの最大の問題は、中東和平プロセスで「善意の仲介者」の役割を果たしてきた米国が、そうした役割を事実上放棄し、パレスチナ問題の解決を不可能にすることだ。
パレスチナがPLOとハマースに分裂し、交渉相手がいなくなったことは事実だろうが、それでこの問題を解決しなくてよいことにはならない。むしろ、問題解決が長引けば長引くほど、イスラエルの生存権が脅かされることになるだろう。そのことを正確に理解するイスラエル人は少なくないはず。中東和平プロセスは瀕死の状態だ。
〇 欧州・ロシア
西欧は今週から本格的な活動再開かと思ったが、EU関連の閣僚会議がいくつかあるものの、本格的な外交活動をしているのはドイツ外相のトルコ訪問ぐらい。まだまだ、欧州のバケーションは続くのだろうか。それとも、今週は偶然大きな動きがないだけなのか。
〇中東・アフリカ
7日、シリア情勢についてロシア・トルコ・イラン首脳がイラン北西部のダブリーズで会合を開く。ロシアとイランは仕方ないとしても、トルコがこうして米国から距離を置きつつ、イランとロシアに接近する状況は隔世の観がある。トルコには他に選択肢がないのか。エルドアン大統領は自国の利益を益々害しているような気がするのだが。
〇東アジア・大洋州
米大統領は11月の米・東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議、東アジア・サミット、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席しないそうだ。代理でペンス副大統領が出席するらしいが、トランプ氏は昨年も、APECと米ASEANの両首脳会議には出席したものの、東アジアサミットは欠席している。実に困ったことだ。
〇南北アメリカ
故マケイン上院議員の葬儀にトランプ氏は招かれなかったが、イヴァンカ夫妻は参列していた。その間、トランプ氏はゴルフに出かけたという。これが現在の米国内政の実態かと思うと、ぞっとするではないか。失礼だが、中南米諸国じゃあるまいし、トランプ氏の米国の体たらくは救い難いレベルに達してるようだ。
▲写真 トランプ大統領とカナダ・トルドー首相夫妻 2018年6月8日 G7サミットで 出典:Official White House Photo by Shealah Craighead
一方、外交面でトランプ氏は、NAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉を巡り、8月末までにカナダと合意できなかったとして、議会に対し、メキシコとの2国間協定を進める意向を通知したという。トランプ氏はカナダのトルドー氏が余程嫌いなのか、それとも何かカナダ側に別の理由があるのか。これが日本でなくて良かったとつくづく思う。
〇インド亜大陸
特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
トップ画像:就任後初の外遊で「嘆きの壁」を訪れたトランプ大統領(2017年5月22日)出典 The White House Facebook
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