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米でセリーナが女性差別の被害者との論調

Japan In-depth / 2018年9月11日 16時29分

 


 


■ 大坂もひとりの黒人女性


 


一方、米『ボストン・グローブ』紙のジェネー・オスターヘルド記者は、「ウィリアムズは試合後、ネット越しに大坂を抱擁し、表彰式で観衆にブーイングをやめるよう促し、記者会見で大坂に学ぶところが多いと述べた。表彰式で大坂を抱きしめて微笑ませたのに、大坂からスポットライトを奪ったと非難されている」として、ウィリアムズが立派なスポーツマンシップを示したとの見解を表明した。


 


こうした意見は、「大坂の晴れ舞台が台無しにされた」「大坂が日本人であるから、差別を受けた」との日本で主流の論調とは異なる。事実、優勝して主役になるはずの大坂の存在は、ウィリアムズの引き立て役、ジェンダー闘争のダシとなって、ほぼ完全に霞んでいる。


 


また、大坂がハイチと日本のハーフであり、国籍は日米二重国籍だが日本代表、米国育ちではあるが、ブーイングを受けて自分のせいではないことに謝罪した日本人性など、彼女のアイデンティティーが複雑であることに、日本人同様、米国人の理解が追い付いていない。


 


オスターヘルド記者は、「大坂はハイチと日本のハーフであることを誇りだと語っており、ハイチ人の祖父母の下で育った。(日本代表であるからといって)ハイチの血を軽視し、彼女の黒人性を無視してはならない」と書きながらも、大坂について日本で報じられるような日本人性に関しては言及していない。


また同記者は、「大坂が観衆に謝罪したことは、女性、特に黒人女性が自己の偉大さに引け目を感じなければならない文脈で起こった」と分析したが、自分の過ちではないことに謝罪する日本文化への理解がないように見える。


 


今回の騒動では、こうした「多重のアイデンティティー」「ジェンダー」「人種」などが複雑に絡み合い、全体像を見えにくくしている。


 


だが、ウィリアムズがいみじくも語ったように、彼女自身が若くしてチャンピオンになった際は、このような苦痛をもたらす出来事はなかったのである。だからこそ、彼女がその場で憤りをこらえ、大坂への祝福が十分得られるように配慮できなかったのか、悔やまれる。



写真)大坂なおみ選手(2017年ウィンブルドン)

出典)si.robi


 


 テニス界に女性差別があることは、誰も反論しない。男性は審判に怒っても罰せられず、コートで上半身裸になってもペナルティを受けない。反則を犯した男性選手を厳しく罰し、審判の差別を正していくことは非常に大事である。


 


その場で怒りをぶちまけることで、せっかくの正しい主張が誤解を受けたことへの反省がウィリアムズにあれば、今回の「事件」はすべての関係者にとってよい教訓となろう。


 


ウィリアムズの黒人女性としての主張が正当であるからこそ、翌日か翌々日まで待って、もうひとりの女性である大坂に花を持たせることはできなかったか、また観衆がブーイングを抑えることができなかったのか、悔やまれる。


 


ウィリアムズが米国人観衆の長いブーイングをすぐに止めなかったのは、自分の正義と正当性の「立証」だったからであり、そこに彼女はしばし浸っていたのではないか。だが、彼女の不作為は大坂を深く傷つけたのである。


 


大坂も、ひとりの黒人女性だ。そして、優勝したのは外ならぬ大坂なのだ。


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