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水素電力貯蔵はバナジウム電池に敗北する

Japan In-depth / 2018年9月24日 18時0分


▲図 VRFBの概念図 出典:住友電工ウェブページの「住友電工のエネルギーソリューション」より


 


■ 電池効率


VRFBは水素を圧倒する。


第一の理由は電池効率での優越である。これは投入した電力のうち何%を取り出せるかの指標だ。その数字が高ければ高いほど経済性に優れる。


VRFBは電池単体で75%以上を達成している。(*1)定格75kwhの電池の完全充電は100kwhで済む。あるいは100kwhの電力を投入した電池から75kwhの電力を取り出せる。つまり充電ロスは25%で済む。


対して水素電力貯蔵では50%に達しない。電気分解による水素製造の実効率は最高70%程度である。水素燃料電池の変換効率も最高で60%程度だ。つまり合算効率は42%である。100kwhを水素貯蔵に投入しても取り出せるのは42kwhだけでしかない。68kwhは無駄になる。


長期的に見ても水素効率は70%には達しない。液相での電気分解の効率は80%が天井である。また燃料電池の将来発達予想でも80%を超える話はない。頑張っても64%だ。


VRFBと較べて水素電力貯蔵は無駄が多い。不経済であり選択されないのだ。



▲図 水素電力貯蔵(※加筆赤面部)水素社会構想には水素による電力貯蔵が含まれるがロスが多い。手間をかけて電力を水素に換え、再び水素を電力に戻すためだ。それなら電池のなかで電解液と電子のやり取りをしたほうがよい。 出典:経済産業省「水素社会の実現に向けた取組について(2015.2.24)」p.4のイラストに加筆。


 


■ 貯蔵効率


VRFBは水素を圧倒する。


第二の理由は貯蔵効率の差だ。VRFBはタンク容積あたりの貯蔵電力量が大きい。そのため貯蔵タンクの経済性で圧倒する。


VRFBは電力1kwhの貯蔵に合計60リットルの電解液しか必要としない。(*2)つまり1万kwhの電力貯蔵はタンク容積600立米で達成される。縦横高さが4mの立方体タンク10ヶ弱あればよい。またタンク形状や強度や耐食性の制約も小さい。極端な話、井戸を掘って内貼するだけでも利用可能だ。


だが、水素では1kwhの保管に容積500リットルを必要とする。1万kwhの電力には1気圧で5000立米の水素が必要とする。縦横高さで17mの立方体タンクが必要となる。


圧縮貯蔵はコスト増加を伴う。圧縮にもエネルギーは必要となる。その上、容器となるガスホルダーも球体あるいは円筒の耐圧型にしなければならない。


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