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水素電力貯蔵はバナジウム電池に敗北する

Japan In-depth / 2018年9月24日 18時0分

取扱の差も大きい。VRFBは危険や面倒はない。プラス液を摂氏45度以下に維持するだけだ。対して水素は可燃物である。その点で使いにくい。


この貯蔵効率でも水素はVRFBに劣るのである。



▲写真 ガスホルダー 水素は貯蔵も厄介である。ガスホルダーにしても10気圧以下であり、球面かつ耐圧密閉構造のため安価には作れない。 出典:WIKIMEDIA(撮影Mikkabie)


 


■ 本体電池価格


VRFBは水素を圧倒する。


第三の理由は本体電池の価格差だ。これもVRFBは経済性で水素を圧倒する。水素電力貯蔵は法外に高価な燃料電池を用いる。そのため競争にならない。


VRFBは現段階で1kwあたり35万円程度である。既述した『金属功能材料』記事では5kw本体電池の価格を約350万円としている。そして同時期には技術発展があり電池出力は数倍に向上した。向上分を2倍としても35万円/kwとなる。


これが水素で使う燃料電池なら1kwあたり200万円程度はする。500~700wの燃料電池を含むエネファームの市販価格は200万から250万である。うち燃料電池のコストを半分とみればその程度だ。ちなみに「NEDO 燃料電池・水素技術開発ロードマップ」でも現時点価格は数百万円/kwとしている。


つまり5倍程度の価格差となる。同じ能力10万kwの電力貯蔵設備を作る場合、VRFBなら本体電池は350億円で済む。対して水素貯蔵なら燃料電池に2000億円かかる。


格差は今後も拡大する。VRFBは燃料電池と較べて歴史が浅く累計投資額も小さい。つまり改良の余地は研究が進んだ燃料電池よりも大きい。特に隔膜の代替品が見つかれば価格は一気に下落する。


 


■ バナジウムの高騰


水素電力貯蔵は実現しないということだ。新電池VRFBに経済性で劣る以上、そうなる。


そのVRFBの普及も間近である。


実証運転の結果は良好である。北海道では出力1.5万kw、容量6万kwh電池が15年末には運用開始されている。他国の例も多い。


そして市場もVRFBを前提に動いている。それを示唆するのがバナジウム高騰だ。15年末には1ポンド5ドル未満だった。それが今では20ドル前後である。これはVRFB需要を見越した結果とされている。


このVRFBが商業展開したとき水素貯蔵構想はトドメを刺される。本質的に経済性で劣る上、実現性でも遅れを取る。挽回の余地はない。この点でも水素社会は来ないのだ。


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