ドイツ最大の“難題”はトランプ氏
Japan In-depth / 2018年9月26日 0時0分
嶌信彦(ジャーナリスト)
「嶌信彦の鳥・虫・歴史の目」
【まとめ】
・世論調査でドイツ人が選んだ最大の恐怖は「トランプ氏」。
・トランプ氏の「米国第一主義」が世界秩序を壊し始めている。
・米欧亀裂に中露が介入。冷戦期と異なる危険をはらむ。
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「ドイツ人が恐れる最大の脅威は、アメリカのトランプ大統領だ」――ドイツが毎年行なっている世論調査「ドイツ人の最大の恐怖」の18年版にこんな結果が出て、EUの人々を驚かせている(ニューズウィーク誌9月18日号等)。
2400人を対象にしたR+V Versicherungenの世論調査の結果で、過去2年間トップだった「移民流入(63%)」「ユーロ圏の債務危機(58%)」「テロ(59%)」などを抑えて69%となり、1位となったのだ。トランプが1位になったきっかけは、リーマン・ショックだったようだ。そんな時期に何をするかわからないトランプ大統領が登場し、ますます先が読めなくなったと感じたのではないか。
▲写真 Lehman Brothers Asia headquarters(2008年4月1日 撮影地:東京)出典:frickr
リーマン・ショックはアメリカの大手証券「リーマン・ブラザーズ」が10年前に破綻して世界中の景気が「100年に一度の危機」といわれるほどおかしくなった事件だった。当時のアメリカは好況で低所得者層も「サブプライムローン」という高金利の住宅ローンを借りて住宅価格の高騰を期待し、多くの人が借りた。
しかし、住宅価格は期待以上に上昇せずローンを返せない人が続出した。しかもその住宅ローンを世界中の金融機関も「将来はトクする」と購入していたが、結局当てがはずれ住宅ローンを返せなくなる人が続出。その結果、世界中の住宅バブルの崩壊でリーマンが破綻しただけでなく、他の金融機関も巨額の損失を抱え込んだ。米のGMが破綻したばかりでなく、リーマンは世界不況に広がり人々の夢と暮らしが次々と崩壊し、再び失われた10年に脅える結果となる。
幸い日本は他国ほど資産の余剰がなかったため、他国に比べ比較的軽度の損害で済んだ。しかしアメリカでは派遣社員の雇用を打切る「派遣切り」で失業者が増大し、各国政府も派遣切り競争に走ったのだ。この結果、アメリカでは多くの失業者を生み、低所得者向けのフードスタンプ(食料費補助)まで発行されたほどだった。
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