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ナチスの戦争犯罪と死刑廃止論 昭和の戦争・平成の戦争 その7

Japan In-depth / 2018年10月3日 10時57分


▲写真 アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所へ送る人を選択するドイツ軍 出典:Unknown


アウシュヴィッツが特に有名だが、ナチス・ドイツは占領地域に多くの強制収容所を設けた。ここに収容され、殺害されたのは、ユダヤ人だけではなく、ロマ(ジプシー)などの被差別民族、さらには政治犯から同性愛者まで多岐にわたった。


これが法理論上、どう理解されるかと言うと、実は死刑制度が濫用されたのだ。


ナチスの論理によれば、ユダヤ人はドイツ国家の敵であり、当時の感覚では、「国家の敵を国家が死刑にしてなにが悪い」と言い得たのである。


実際に、戦後ナチスの戦争犯罪を裁いたニュルンベルク裁判においても、いかなる罪状に該当するのか、ということが、まず問題になった。



▲写真 ニュルンベルク裁判の被告席 出典:Work of the United States Government


捕虜を虐待したり、占領地域の市民に対する暴行や略奪は、数々の条約で禁じられていた(まとめて、戦時国際法と俗に呼ばれた)が、ナチスとユダヤ人は戦争をしていたわけではないので、逆にこうした法規には縛られなかったのである。


そこで連合国側=戦勝国側は、「人道に対する罪」というものを考え出した。これが後に、旧日本軍や指導的立場にあった政治家たちを裁いた極東軍事裁判、世に言う東京裁判でも適用された。


これもこれで、法理論的には大いに問題がある。戦勝国は、「何人も弁護人付きで裁判を受け、有罪の判決を下されることなしに刑罰は科せられない」という、近代法の大原則を守ったことをアピールしたかったのだろうが、そのために、「いかなる犯罪も、犯罪が行われた後になってから作られた法律で裁くことはできない」という、もうひとつの大原則を無視したのである。


東京裁判において、インドのパル判事はこの点を問題視し、事後法を適用するのでは、戦争犯罪を裁くのではなく単なる復讐になってしまうとして、被告人全員を無罪とすべきである、との意見書を提出した。



▲写真 インドのパル判事 出典:Lubinlunib


一部の日本人は、これをわざわざ「パル判決書」と呼び、念の入ったことには「日本無罪論」などというタイトルを勝手にくっつける人もいるが、あくまでも「意見書」が正しく、「日本軍は悪いことはしていない」などとは、一言も述べられていない。ちゃんと読んでから、ものを言って欲しい。


少し話を戻すが、第2次世界大戦中までは、どこかの国が、ある種の人間は片っ端から死刑、といった政策をとったとしても、国際社会が掣肘を加えることはできなかった。まさかそんなことが起きようはずはない、と考えられていたのだが、ナチスが実際にそうした事態を引き起こしたのである。


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