米判事候補スキャンダルの大騒ぎ
Japan In-depth / 2018年10月5日 8時48分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2018 #40」
2018年10月1-7日
【まとめ】
・「人々を傷つけることがスポーツである町」ワシントンは相変わらず。
・米最高裁判事候補の性的暴行疑惑に対し日米で異なる問題意識。
・トランプ政権の優先順位イラン一番、中国二番、北朝鮮は低い?
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先々週は3泊5日の強行軍で米国の三都市を回ったが、先週は久し振りで台北に行ってきた。台湾のシンクタンクと関係省庁が共催した「アジア太平洋シンクタンク・サミット会合」なるものにお声が掛かったのだ。欧州を含む18カ国・地域のシンクタンクの代表が集まった。台北は久し振りだが、自由な民主主義は健在だった。
会議と食事は朝から夜まで続いたが、深夜になってもついCNNを見てしまう。最高裁判事の指名を受けたブレット・カバノー(Brett Kavanaugh)氏に学生時代の性的暴行疑惑が持ち上がり、同判事とその告発者である女性大学教授の二人が上院司法委員会の公聴会で宣誓証言したのだ。米国のリベラル・中道メディアにとっては絶好のネタである。
この泥仕合をどう見るべきかについては、米国人の間でも、老若男女で意見は大きく異なる。筆者が最も注目したことは、ワシントンが相変わらず弱肉強食の「政治闘争」の町であること。1993年にホワイトハウスの法律顧問が、ワシントンは「人々を傷付けることがスポーツである町」と書いて自殺した事件を思い出した。
この点については今週のJapan Timesのコラムに詳しく書いたので、ここでは繰り返さない。簡単に言えば、日本ではこのスキャンダルが中間選挙やトランプ政権の行方を如何に左右するかに関心があるのに対し、米国では女性差別が今も続き、米国政治が男性優位であり続けるとの問題意識の方が注目されているのだ。
17歳の時の暴行未遂らしきものを「若気の至り」と見るか、「重大な女性差別」と捉えるかで結論は大きく異なるだろう。議論は重要だと思うが、その陰で傷付くのは何の罪もない家族である。日本にもこの種のスキャンダルはあるが、#MeToo運動については米国の方に一日の長があるように思う。日本はまだ男性中心社会だと思う。
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