福島の風評払拭に貢献する若者の熱意
Japan In-depth / 2018年10月5日 11時0分
▲写真 カリム君が実習を受けた神戸市立医療センター中央市民病院 出典:Wikimedia
カリム君にとって、日本の先端医療機関の見学は刺激に富んだ経験だったようだ。「モロッコで見ることができない最新の機能が詰まったCTやMRIには驚いた。内視鏡手術へのアクセスがよく、日本では、これが普通なのが羨ましい」と述べる。そして、「日本やアメリカなどの先進国で、医療技術を身につけ、故郷であるモロッコの医療に貢献したい」と希望する。
神戸と東京での研修を終了後、妹尾さんとカリム君は福島県いわき市のときわ会常磐病院を訪問した。彼女にとっては、通い慣れた施設だ。
カリム君は福島に関心がある。それは、近年、モロッコでもロシアと共同して原発を建設する話がでているからだ。彼は「モロッコ政府に原発を管理する力はない」と考えている。だからこそ、原発の安全性や事故の際の避難に関心がある。
ところが、彼がモロッコで福島について得ることができる情報は少ない。「福島の事故はモロッコでも大きく報道されていました」という。ただ、報道される内容は偏りがあり、放射性物質で広く汚染されたイメージが流布されているらしい。
ところが、実際に見るいわき市の光景は、当初の彼の予想とは全く違っていた。市民が日常生活を送っており、常磐病院の診療光景は神戸や東京と全く変わらない。
ただ、現在も常磐病院では、内部被曝を評価するためのWhole Body Counter検査が続いていること、日本では現在も福島に対する根強い差別が残っていることを知り、原発事故の風評被害の深刻さを実感したそうだ。原発は安全対策以上に、万が一の事故後の風評被害対策が重要だ。そのためには原発に対する徹底的な情報開示と、国民的な議論が欠かせない。
▲写真 立体型ホールボディカウンター 出典:ときわ会常磐病院(福島県いわき市)ホームページより
彼は「モロッコでは国民に対する説明など、準備が整っていないことに危機感を抱く」と述べた。そして、「帰国したら、今回の経験をモロッコの友人に伝えたい」という。
福島で活動していると、世界各地から様々な視察団を受け入れる。対象は放射線や公衆衛生の専門家から、米軍の研究者まで幅広い。ただ、共通して言えるのは、原発事故となんらかの関係がある人たちだ。例えば、米軍関係者は「ボストンなど中核都市が小型核爆弾でテロを受けることを想定している」と言っていた。彼らが福島を視察するのは、自らの仕事の一環だ。明確な目的をもち、自らが求める情報を入手することにエネルギーを注ぐ。
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