「一帯一路」が招くウイグル人大弾圧
Japan In-depth / 2018年10月22日 18時0分
中国政府の人権や法の支配の状況を調べた同報告は新疆ウイグル自治区でウイグル人約800万のうち100万もが、全区で1300ヶ所もの強制収容所に入れられたことを伝えていた。所内ではイスラム教や民族古来の言語、風習、文化を捨てる「政治再教育」を無期限に受けさせられる。その過程では水責めの拷問、強制絶食、睡眠禁止などの苛酷な措置が加えられる。
アメリカ官民あげての1年にわたる調査に基づく同報告は、中国政府がウイグル人に民族や宗教の年来の帰属要因をすべて放棄させ、共産党の無宗教の理念の下に「中国化」する大作戦を徹底させ始めたことを伝えていた。とくに海外で中国共産党の行動を批判するカーディルさんのような在外ウイグル人の指導者や学者、言論人の留守家族への懲罰的な措置がひどいという。
同報告は中国を批判する在米ウイグル人記者の82歳の母や、ウイグル人学者の61歳の弟らが収容所内で次々に不審な死をとげた悲惨な状況をも詳しく記していた。そして中国政府のいまの措置を「人道に対する罪」と断じていた。
▲写真 トランプ米大統領(右)とペンス副大統領(左)出典:flickr NASA HQ PHOTO
トランプ政権も正面からウイグル問題での中国政府の非人道的な措置を非難するようになった。トランプ政権を代表するマイク・ペンス副大統領は、ワシントンでの10月4日の演説で次のように述べた。米側の対中政策の歴史的な転換を画す重要演説のなかでの主要ポイントだった。
「新疆では中国共産党はイスラム系ウイグル人を100万人にも達するほど多数、政府が新たに開設した強制収容所に拘束し、昼夜を問わない洗脳を課している。その強制収容に生き残った人たちは自分たちの体験を北京政府によるウイグルの文化を絞め殺し、イスラムの信仰を踏みにじる意図的な試みだと描写している」
ペンス副大統領は、だからアメリカ政府としてこの中国の行為に断固として抗議し、その阻止のためには制裁措置をもとることを示唆したのだった。だが中国共産党はここにきてなぜ急にウイグル人の弾圧を徹底させたのか。
▲写真 習近平国家主席の側近と言われる陳全国・新疆ウイグル自治区中国共産党委員会書記 出典:Public Domain
新疆ウイグル自治区の中国政府最高権力ポストの共産党委員会書記に習近平側近とされる陳全国氏が就いたのは2016年8月だった。共産党中央委政治委員の陳氏はそれまでチベット自治区での「中国化」に実績をあげたとされた。そして新疆ウイグル地区では昨年春から前例のない大規模なウイグル住民の大量強制収容と洗脳工作を異様なスピードで推進した。チベットや内モンゴルでの少数民族の強制同化とはまったく異なる勢いでのこの工作の真の理由はなんなのか。
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