アメリカを侵す中国 その2 トランプ政権の最大課題
Japan In-depth / 2018年10月24日 18時0分
政権の内外でも、議会でも、ニュースメディアでも、学界でも、アメリカにとって、さらに世界にとっての中国をどう定義づけ、どう対抗すべきか、あるいは協調すべきか、は切迫した重大課題となってきたのだ。
そうした状況のなかで、中国がアメリカに対して仕かける幅広い工作の担い手が「統一戦線」であり、その工作の方法が「統一戦線方式」だというわけである。アメリカに対する多方面、多様な戦いであり、チャレンジなのだ。こういう現実がアメリカ側で幅広く認識され、懸念されるようになったのである。その結果の一つが「統一戦線」への警戒の議論なのだといえる。
本来の統一戦線とは前述のとおり、中国共産党中央委員会の統一戦線工作部(組織としての略称は統戦部)のことで、共産党と党外の協力的な政治勢力との連携を主任務として1942年に設立された。
この時期は日中戦争を含む第二次世界大戦の最中であり、日本と戦う中国共産党にとって中国内部の非共産主義の諸勢力との連帯強化は致命的に重要だった。その任務が統戦部に与えられた。ただしこの種の「連帯」も共産党にとって不要となれば、仮借なく断ち切っていくのが統一戦線方式の特徴でもあった。その統戦部は1960年代の文化大革命中は活動の停止となったが、1973年には復活した。
そんな組織の名が2018年の現在、なぜワシントンで指摘されるようになったのか。簡単にいえば、その理由は習近平主席が最近になってこの統戦部を大幅に拡大し、それまでは基本的に国内での活動専門だったのを対外工作の大任務を与えるようになったことである。
アメリカ政府の国家情報会議や国務省、中央情報局(CIA)などで30年以上、中国問題を担当してきたロバート・サター・ジョージワシントン大学教授は現在のアメリカにとっての「統一戦線」の意味について次のように語った。
▲写真 ロバート・サター・ジョージワシントン大学教授 出典:International Affairs
サター氏の解説によると、習近平氏は前述の統戦部を対外戦略にまで動員することを決め、グローバルにその組織を機能させるようになった。当面、その工作を実行する標的としてはアメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、マカオ、台湾などが浮上した。
だがなんといっても統一戦線の最大の標的は超大国のアメリカなのだという。当然ではあろう。アメリカ側でもいまや広範に中国のこの新たな浸透作戦、影響力行使活動の危険性が指摘されるようになったというわけだ。
(その3に続く。その1はこちら)
*この連載記事は月刊雑誌「WILL」2018年11月号に掲載された古森義久氏の「米国の怒り 中国を叩き潰せ!」という論文を一部、書き換え、書き加えた報告です。5回に分けて掲載します。
トップ画像:訪中したトランプ大統領(中央右)と習近平国家主席(中央左)2017年10月25日 出典:ドナルド・トランプ大統領Facebook
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