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中東危機シミュレーションの教訓

Japan In-depth / 2018年10月26日 0時44分

中東危機シミュレーションの教訓


宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)


「宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2018 #43」


2018年10月22-28日


 


【まとめ】




・中東政策シミュレーションに見た各国の思惑。日本はやはり「蚊帳の外」




・「トカゲの尻尾切り」サウジ皇太子は危機感不足。




・安倍首相訪中へ。対米関係悪化の中国の秋波は戦術的で期待禁物。


 


【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depth  https://japan-indepth.jp/?p=42614のサイトでお読みください。】


 




先週末は久し振りに中東三昧だった。筆者が所属するキヤノングローバル戦略研究所が年三回実施する政策シミュレーションで湾岸地域を取り上げたからだ。詳しくは今週木曜日の産経新聞コラムに書いたので、ご関心の向きは一読願いたい。テーマはズバリ、「米国とイランは軍事衝突に向かうのか」だ。


今回も40人近い現役公務員、専門家、学者、ビジネスパーソン、ジャーナリストが集まり、イラン、サウジアラビア、イスラエル、日米中露の各政府、報道関係者を一昼夜にわたり実にリアルに演じてくれた。改めて週末を犠牲にしてくれた彼ら参加者の貴重な知的貢献に深甚なる謝意を表したい。


特に、米国大統領とイラン最高指導者を演じてくれた二人には感謝してもしきれない。米大統領は金髪のカツラでトランプ氏になり切っていた。イラン最高指導者に至っては、どこから手に入れたのか、シーア派イスラム法学者のターバンと衣をまとい、見事にハーメネイ師を演じてくれた。実に有り難い。


シナリオは盛り沢山で、イランの秘密ウラン濃縮疑惑露見、イエメンでのサウジ軍機撃墜、イランのイラク領内弾道ミサイル配備、サウジ東部製油所の反政府勢力による占拠、湾岸某王国でのイスラム革命発生、サウジ王宮府へのドローン攻撃に続き、最後はイランと米国・イスラエルが戦闘を始めた。


おいおい、そんなことあり得ないと訝る向きもあろう。確かに米国・イスラエルとイランは相互抑止が効いていおり、簡単には開戦しない。だからこそ、今回はイラン革命防衛隊の前線の一部部隊が暴走し、イスラエルと米国を軍事的に挑発するという状況を意図的に作った。


今回の政策シミュレーションで得られた教訓は少なくない。米・サウジ関係、ホルムズ海峡封鎖、イスラエルの思惑、中東における中露の意図などにつき大いに考えさせられた。最も残念なのは今回も日本が「蚊帳の外」にあったことだ。それが嫌なら、関係法令、更には憲法の改正を求めるべきなのだろう。


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