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アメリカを侵す中国 その4 研究機関への干渉

Japan In-depth / 2018年10月28日 20時21分


写真)トシ・ヨシハラ上級研究員 

出典)OSBA


 


この報告書の「中国の統一戦線工作部のプロフィール」という一章には以下のような骨子の記述があった。これらの記述の大部分は中国共産党内部で実際に記された文書に依拠したという。この報告書の記述では中国共産党が対外的な工作を「政治闘争」の一環と定義づけているとする点が興味深い。


・中国共産党は2015年5月に統一戦線工作部の10余年ぶりの重要拡大会議を開いて、同部の党内での地位が大幅に拡大されることを確認した。習近平国家主席が同時に同工作部の主導小グループを結成し、新たに対外的な政治闘争、教宣活動の役割を決めた。工作の主要な対象としてはアメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、カリフォルニアなどがまず選ばれた。


・統一戦線は対外工作の推進のためには世界各国に居住する中国系住民をフルに活用する。そのために統一戦線は在外中国人が中国への人種上、民族上の帰属の意識だけでなく、中国共産党の指導下の中国のあり方に同調し、共産党の現在の独裁的な統治への支持や忠誠を保持するように働きかける。従来の華僑の中国観や自己認識を根本から変えて、新世代が中国との一体感を抱くように工作する。


・統一戦線は習近平主席の対外影響力行使の中枢機関として各国で、共産党指導下の中国を支持する国民ができるだけ多くなり、中国に反対する国民ができるだけ少なくなることを目指す。同時に統一戦線は米欧の民主主義、人権、法の支配などという基本的な価値観を基準に中国のあり方を批判する動きには多角的に対応し、中国への非難を最小限に抑える。


・統一戦線は相手国の国民の心をつかむために相手側の政府や議会だけでなくニュースメディア、教育機関、さらには市民団体などへの働きかけを実行する。相手側の信頼や友好を得るために、時間をかけ、慎重に工作を進める。その過程では台湾、チベット、中国内部の民主化活動、一帯一路構想、法輪功という課題について中国当局の立場をそれとなく、しかし確実に伝えていく。


・統一戦線はアメリカはじめ特定の諸外国での工作では中国人留学生の役割を重視する。中国人の外国留学生は近年では全世界で総計350万人にも達したとされ、アメリカでは高等教育レベルで約35万となった。統一戦線の工作員はこれら留学生に対し中国の共産党や祖国への貢献を常に促している。留学生への接触や監視を保ち、外国での工作に協力させる。とくに留学先の大学での中国に関する講義や研究の内容が中国当局の方針に沿わない場合には抗議して変更を求めさせる。


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