アメリカを侵す中国 その5 中国工作員が米名門大に浸透
Japan In-depth / 2018年10月30日 11時3分
画像:孔子学院 出典:The Confucius Institute at The University of Manchester
さてウィルソン・センターの報告書は「苦情」や「圧力」の実例としてはジョージワシントン大学でのダライ・ラマの講演計画やウィスコンシン大学での台湾政府代表の招待計画にそれぞれ中国人外交官が激しい抗議を繰り返し、それぞれの大学と中国との協力的なプログラムの打ち切りを示唆したケースをあげていた。
「報復」の実例としては同報告書はメリーランド大学がダライ・ラマを招いたことに対して中国側が同大学への中国人留学生派遣を停止したケースや、カリフォルニア大学サンディエゴ校がチベット関係者との交流を進めたことに対して同校への中国政府系学者の公式派遣を停止したケースを指摘していた。中国側はアメリカの学者たちには脅しの手法として中国への入国ビザの発給を拒否することを示唆するという。
同報告書は「懐柔」としてはウィスコンシン大学のエドワード・フリードマン教授が中国側から中国政府が望むような内容の本を2万5千ドルの報酬で書くことを勧められた事例などを示していた。
写真)エドワード・フリードマン教授 出典)ウィスコンシン大学
また報告書は中国側のアメリカ大学の「学問の自由への侵害」の延長として米側学者たちの「自己検閲」を強調し、実例をあげながら、詳しく説明していた。アメリカの大学や研究所で中国関連の学術テーマを専攻する教職員のなかには中国政府が嫌がることを表明すると、さまざまな形で報復や非難を浴びるという危険を恐れて、本来の意見を自分の判断で抑えてしまう人たちも少なくない、という指摘だった。
同報告書はこの現状は米側の官民や各大学が一体になって団結し、変えなければならないとして、具体的な政策をも提言していた。
こうした調査結果が学術研究として公表されるようになったことはいまのアメリカの官民での対中関係の見直しと中国への認識の硬化の反映だともいえよう。
中国共産党によるこうしたアメリカへの工作は統一戦線が主役となっている。アメリカ側でいまやそうした認識と反発とが急速に高まってきたのである。
さてわが日本での状況はどうなのだろうか。
(終わり。その1、その2、その3、その4。全5回)
*この連載記事は月刊雑誌「WILL」2018年11月号に掲載された古森義久氏の「米国の怒り 中国を叩き潰せ!」という論文を一部、書き換え、書き加えた報告です。5回に分けて掲載しました。
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