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日中の真の問題は語られず

Japan In-depth / 2018年10月30日 16時45分

日中の真の問題は語られず


宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)


「宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2018 #44」


2018年10月29日-11月4日


 


【まとめ】


・日中首脳会談の真の問題は共同記者発表等で語られなかった事項。


・ドイツ・メルケル政権の危険信号が始まった。


・反ユダヤ乱射事件を自身の問題と捉えないと米国の病理は理解できず。


 


【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depthのサイトでお読みください。】


 


 


 今週は外交・安保ネタが実に豊富な週だ。まずは日中首脳会談から始めよう。詳しくは30日の産経新聞「正論」欄に書いたので、時間があればご一読頂きたい。(参照記事:「【正論】中国の「微笑」は戦術的秋波だ キヤノングローバル戦略研究所研究主幹・宮家邦彦」)要するに、今回の日中首脳会談は、中国がこれまでで最も考え抜いた末の苦肉の策ではなかったのか。これが筆者の現時点での仮説である。


 そもそも、中国首脳が参加する会談に失敗は許されない。不愉快なことがあれば首脳会談そのものがキャンセルされる。だから、定義上、日中首脳会談なるものは常に成功する。真の問題は共同記者発表等で語られなかった事項だ。今回の訪中で共同声明等の文書は発表されなかった。されば、これは将来のお楽しみということか。


 


 今回は歴史、靖国、尖閣、南シナ海、一帯一路などについても殆ど言及がなかった。だが、政治や安全保障の問題で中国が戦略的に対日譲歩することは絶対にない。されば、現時点で日本は経済面で取れるものを取りつつ、戦術的利益を最大化すべきなのだろう。それ以上でも、それ以下でもない、というのが筆者の見立てだ。


 


 安倍首相の最初の訪中は2006年10月、筆者も同行したのでよく覚えている。この訪中で同首相は「戦略的互恵関係」を旗印に小泉純一郎首相時代のギクシャクした日中関係を劇的に改善させた。ところが2012年末以降、中国は同首相に尖閣問題で譲歩を迫り、世界各地で安倍孤立化キャンペーンを張るようになった。


 しかし、2014年以降主要国では安倍評価が高まり、逆に中国が孤立を深めていく。2017年にトランプ政権が誕生すると、中国の孤立化は益々深まり、更に今年に入って米中「大国間の覇権争い」が一層激化した。さすがの中国も対日関係改善に動かざるを得なかったのだろう。


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