追尾式機雷は琉球列島封鎖の役に立たない
Japan In-depth / 2018年11月12日 20時6分
▲図
その上、破壊力も不足している。Mk46は火薬量40kg程度だ。これは水上艦船を攻撃用と比較すると1/5~1/7でしかない。しかも短魚雷の信管動作は直撃/近接モードのみだ。水上艦船攻撃に最適な艦底起爆モードはない。
■ 潜水艦用としても能力不足
また、潜水艦攻撃用としても能力が不足している潜水艦静粛化に対応できなくなったためだ。各国潜水艦はほぼ無音化している。そのため追尾式機雷は潜水艦探知や魚雷発射のタイミング判断ができなくなった。
追尾式機雷のセンサや判定ロジックは比較的単純だ。例えばキャプターでは音響センサはカプセル頭部に簡易小型のタイプが一個あるだけだ。
以前はそれで問題はなかった。目標潜水艦は大騒音だった。「潜水艦か否か」「射程内かどうか」の判定は容易である。騒音の大きさと周波数分布で機雷は「潜水艦まちがいなし」と判断できた。(*2) また騒音レベルだけでも距離は概算できドップラー・シフトの変化点で最接近も判断できた。そのタイミングで魚雷を発射すればすればよかった。
静粛化によりそれが困難となった。特に電池航行する在来潜水艦は空調雑音を含めてほぼ無音化している。依然として低能力のままの追尾式機雷のセンサでは対処しがたい。まず探知距離そのものが小さくなっている。また受音音量そのものが小さいため潜水艦判定や距離・最接近判断も厳しい。
センサの高級化改良は非現実的だ。機雷缶サイズから大型のセンサはつけられない。また発音-反射波による距離測定は電力を消費する。つまり長期間の待受ができなくなる。なによりも安価といった機雷の長所を殺すからだ。
時代遅れになったということだ。中国潜水艦も静粛性を向上させている。その点で追尾式機雷は海峡封鎖に役立つ兵器ではなくなっている。
■ 現物機雷の在庫はない
最後が実物不存在である。キャプター機雷はすでに米国機雷の在庫にはない。また日本も追尾式機雷は作っていない。キャプター機雷はすでに退役状態にある。機雷は1970年代末から80年代にかけて4678ヶ製造され、88年以降に小改修を受けた。だがあとはそのままだ。兵器としても90年代後半から露出が減り00年代にはほぼ話にも上らない。そして10年ころには在庫からなくなった。(*3)
日本は最初から作っていない。80年代以降、自衛隊は複雑巧緻な機雷の開発を続けた。上昇式機雷を実用化し自走式機雷も試作した。だが追尾式機雷は作らなかった。これは間違いなく効果に関する判断の結果だ。対潜用としても効果は見込めない。将来的にさらに静粛化する潜水艦には対抗できない。そのように判断されたのだ。この点でも追尾式機雷による封鎖は行われないのだ。
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