「私は私」アスリートの国籍について スポーツの秋雑感 その5
Japan In-depth / 2018年11月25日 7時0分
私はこれでも、中学時代は陸上競技部のキャプテンだったので、日本の陸上界にこんな日が来るとは、と感慨深かった。長生きはしてみるものだ。同じく陸上界にはサニブラウン・アブデル・ハキーム選手がいるし、プロ野球の広島カープにはアドゥワ誠選手、武道界にも柔道のベイカー・茉秋(マシュー)選手がいる。
問題は、彼らを同胞と認める人と、認めようとしない人がいることだ。
とりわけ大坂選手など、アフリカ系のルーツが一目で分かる褐色の肌であることから、本当に「日本人初」と言えるのか、といった声も漏れ聞こえてきた。
たしかに大坂選手は、この原稿を書いている2018年11月時点では日米の二重国籍で、日本の国籍法の定めるところにより、満22歳の誕生日(彼女の場合2019年10月16日)以降は、米国籍を放棄する手続きなくして「純粋の日本人」にはなれない。
よく知られる通り、日本は二重国籍を認めていないが、国籍法自体は少しずつ変化してきている。具体的には、かつては「父系主義」で、両親の国籍が異なる子供の場合、自動的に父親の国籍を持つこととされていた。別の言い方をすれば、日本人の父を持つ子だけが日本国籍を取得できたのである。このため、女優の松坂慶子さんは、生来の国籍が韓国であったし、参議院議員の蓮舫さんは、台湾(中華民国)との「二重国籍問題」を国会で追及された。
また、こちらはよく誤解している人が多いのだが、米国は二重国籍を認めてはいるものの、租税回避やテロへの対策上、障壁になりやすく「好ましいことではない」と、国務省が公式見解を出している。他に、二重国籍を認めている国でも、国会議員や軍人・警察官には制限を課している例が多い。
日本も今では、両親いずれかの国籍を選ぶことができるし、前述の通り満22歳まで選択を猶予されている。つまり、前出の3人は、いずれも法的に「純粋の日本人」なのである。
大坂選手に話を戻すと、純粋の日本人ではない、と言う人がいる一方で、表彰式で彼女が見せた謙虚な態度に対して、「さすが、心は大和撫子」などという声も聞かれた。誉め言葉なのであろうが、なんともピントがぼけている、と言わざるを得ない。なぜ私がそう思うのか……という話をするより、彼女自身の言葉を紹介した方がよいだろう。
いや、すでにメディアを通じて有名になっているが、日本・米国・ハイチの3カ国のうち、どこに帰属意識を強く持つのか、と問われた彼女は、
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